PDFJ - 日本語PDF生成モジュール
use PDFJ qw(SJIS);
$doc = PDFJ::Doc->new($pdfversion, $paperwidth, $paperheight);
$font = $doc->new_font('Ryumin-Light', '90ms-RKSJ-H', 'Times-Roman');
$page = $doc->new_page;
$text = Text("テキスト", TStyle(font => $font, fontsize => 10));
$paragraph = Paragraph($text, PStyle(size => 100, align => 'w', linefeed => 20));
$image = $doc->new_image($jpgfile, $pixelwidth, $pixelheight, $width, $height);
$shape = Shape->ellipse($x, $y, $rx, $ry);
$block = Block('V', $paragraph, $image, $shape, BStyle(align => 'c'));
$block->show($page, $x, $y);
$doc->print('sample.pdf');
このモジュールは日本語PDFを生成する。次のような特徴がある。
JIS X 4051「日本語文書の行組版方法」(1995)にほぼ準拠した行組版ルールを組み込んであり、禁則や行の詰め伸ばしはこのモジュールに任せることができる。
ルビ、添え字、縦書き中の欧文、縦中横、欧文のハイフネーション、下線・傍線、圏点、網掛けといった組版処理もこのモジュールに任せることができる。
Type1フォントでは、和文にRyumin-LightとGothicBBB-Medium、欧文にTimes、Helvetica、Courierの各ファミリが使える。これらはフォント自体は埋め込まれないので、コンパクトなPDFを作れる。ただし表示・印刷環境にそのフォントがないと代替フォントとなる。
任意のTrueTypeフォントやOpenTypeフォントを使うこともできる。TrueTypeフォントやOpenTypeフォントは埋め込まれる(和文についてはサブセットで)ので、若干PDFのサイズが大きくなるが、どんな環境でも同じように表示・印刷できる。
欧文に、固定ピッチの半角フォントを使うことも、プロポーショナルな欧文フォントを使うこともできる。
日本語文字コードとしては、シフトJIS、日本語EUC、UTF8、Unicodeに対応している。
JPEG画像(ファイルおよびURL指定)、PNG画像(ファイル指定)と線画図形が扱える。画像や図形をテキストの一部として行内に配置することも可能。逆に線画図形の中にテキストや画像を配置することもできる。
テキストを行長と行送りを指定して折り返し処理し、段落を作ることができる。段落には箇条書きのためのラベルを付けることができる
段落、画像、図形などを並べてブロックというまとまりを作ることができる。ブロックには、内容の配置、周囲の余白、枠線、塗りつぶし色などを指定できる。一方向に並ぶ配列ブロック、縦横に並ぶ行列ブロック、木構造のツリーブロックがある。ブロックは入れ子にできる。
段落やブロックを指定の大きさを超えないように分割して、複数のページに分けて表示することができる。
PDFのフォーム、文書情報、アウトライン情報、ハイパーリンク(文書内およびURL)を付加できる。
暗号化ができる。
PDFJでは次の表示可能な構成要素に対応するオブジェクトを組み合わせてPDF文書を作成する。これらはみな、showというメソッドでページ上に位置を指定して表示することができる。showメソッドの具体的な使い方については後述する。
指定の文字列を、指定のフォントやサイズなどの属性に従って表示するもの。フォントのエンコーディングがHであれば左から右へ横書きで、Vであれば上から下へ縦書きで表示される。
ルビ、添え字、縦中横、下線・傍線、圏点、囲みといった属性の指定ができる。
テキスト自体には行長や行送りといった属性はなく、折り返して表示されることはない。
文字だけでなく、表示可能なオブジェクトを含むことができる。
テキストに対して行長と行送りと配置を指定して行の折り返しをおこない、ひとつの段落として表示するもの。行の折り返しに伴う、禁則処理、ハイフネーション、行の詰め伸ばしは自動的に処理される。
またテキストには、文字だけでなく画像や図形をひとつの文字のように扱って含むこともできる。
行頭、行末のインデント、先頭行につけるラベルを指定することもできる。
段落の前後の間隔を指定することができる。この間隔は段落を並べてブロックを作る際に適用される。
JPEGまたはPNG形式でファイルに保存されているものか、JPEG形式でURLで参照できる画像のみが扱える。元のピクセルサイズとは関係なく指定の大きさで表示できる。
周囲の余白を指定することもできる。
直線、矩形、多角形、円、楕円、ベジエ曲線を組み合わせて図形を作成し、表示できる。線の有無、太さ、色、点線、塗りつぶしの有無、色といった属性が指定できる。
図形内にテキストを配置することもできる。
周囲の余白を指定することもできる。
表示可能なオブジェクトを並べてひとまとめにしたもの。一方向に並べる配列ブロック、縦横に並べる行列ブロック、木構造のツリーブロックがある。
全体の幅や高さを指定して内容の配置を指定することもできる。内容の配置は、左右方向に、l(左)、c(中央)、r(右)、上下方向に、t(上)、m(中央)、b(下)を組み合わせて指定する。ただし、全体の幅や高さは内容によって決まる幅や高さより小さくはできない。
配列ブロックでは、オブジェクトに前後の間隔の指定があれば、それに従って間隔が空けられる。また、直接数値で間隔を指定することもできる。行列ブロックでは、行間隔と列間隔を指定できる。ツリーブロックでは親子方向と兄弟方向の間隔を指定できる。
ブロックには、周囲の余白、枠線、塗りつぶし色を指定することができる。
ツリーブロックには親子間の接続線を指定することができる。
ブロックは入れ子にできる。
縦横に指定のサイズを持った正方形の空白。テキスト中に特定の大きさの間隔を取りたい場合に使用する。
対話フォームの各種の入力フィールド(テキスト、ボタン、チェックボックス、ラジオボタン、コンボボックス)。
指定の幅と高さを持った矩形の領域で、ページと同様に表示可能なオブジェクトを配置できる。領域外にはみ出た部分は表示されない。
その他に次のようなオブジェクトが、表示可能なオブジェクトとともに使用される。
以下の特殊オブジェクトをテキスト中に置くことで様々な指示をおこなう。
改行オブジェクト(PDFJ::NewLine)は段落作成時に強制改行を指示する。
ヌルオブジェクト(PDFJ::Null)は段落作成時に改行可能位置を指示する。
アウトライン指示オブジェクト(PDFJ::Outline)はPDFのアウトライン(しおり)の作成を指示する。
リンク先オブジェクト(PDFJ::Dest)はPDFのハイパーリンクの宛先を指示する。
フォントはType1フォントでは、和文にRyumin-LightとGothicBBB-Medium、欧文にTimes、Helvetica、Courierの各ファミリが使える。TrueTypeフォントおよびOpenTypeフォントは任意のものが使える。ただしPDFに埋め込まれるので、埋め込みが許可されたフォントでなければならない。
和文フォントだけを指定したテキストに欧文が現れたときには、和文フォントの半角文字(文字幅は半角固定)が使われるが、組み合わせる欧文フォントを指定しておくとその欧文フォントが使われる。その場合、欧文フォントの和文フォントに対するサイズ比率を指定できる。プロポーショナルな和文フォントには対応していない。
縦書き用エンコーディング(V)を指定した和文フォントを指定すると、そのテキストは縦書きとなる。
フォント、フォントサイズ、文字描画モード、ベースライン調整、斜体、下線(縦書きでは傍線)、囲み箱、圏点、添え字(上・下)、ルビ、傍注、図形スタイル、が指定できる。
文字描画モードは、文字の枠線と塗りつぶしの組み合わせの指定。図形スタイルは、文字描画、下線・傍線、囲み箱における図形スタイルの指定。
行長、揃え、行送り、ラベル、ラベル長、行頭インデント、行末インデント、前間隔、後間隔、が指定できる。
揃えとしては、b(行頭揃え)、m(中央揃え)、e(行末揃え)、w(両端揃え)がある。
幅、高さ、揃え、揃えフラグ、周囲余白、枠線、塗りつぶし色、前間隔、後間隔、などが指定できる他、行列ブロック、ツリーブロックに特有のスタイルもある。
線幅、点線、線色、塗りつぶし色、周囲余白、前間隔、後間隔、が指定できる。
灰色指定と、RGB指定ができる。図形属性の線色と塗りつぶし色の指定に使われる。
各ページの内容を保持する。テキストや画像や図形など、表示可能なオブジェクトはページに配置することで実際に表示される。
一つのPDF文書。ページ群や、リソースとしてのフォントや画像をまとめ、最終的に一つのPDFファイルとして出力する。
管理者であれば次の標準的な手順でインストールできる。
perl Makefile.PL
make
make install
最後のmake installは管理者権限で実行する。Windowsではmakeでなくnmakeを使用する。
管理者でない場合でも、PDFJを構成する次のモジュールファイル群をPerlから利用できる(すなわち@INCにセットされた)ディレクトリにおけば利用できる。
PDFJ.pm
PDFJサブディレクトリとその中のpmファイル群
PDFJは、欧文のハイフネーションをおこなうために、TeX::Hyphenモジュールを使用している。欧文を含むテキストを扱う場合は必要となるので、CPANからダウンロードしてインストールしておく。管理者でない場合は、次のモジュールをPerlから利用できるディレクトリにおけばよい。
TeX/Hyphen.pm
TeX/Hyphen/czech.pm
TeX/Hyphen/german.pm
PDFJは、フォントや画像などのデータを埋め込む際に、デフォルトではCompress::Zlibモジュールを使用する。Compress::Zlibがない環境や、Compress::Zlibを使いたくない場合のために、Compress::Zlibを使わずにデータの埋め込みをおこなうオプションも用意されている。("文書オブジェクトの作成"を参照)
暗号化をおこなう際には、Digest::MD5モジュールが必要である。
PDFJを使用するには、つぎのようにして use PDFJ の引数に日本語文字コードを指定する。省略すると'SJIS'とみなされる。
# Shift-JISの場合
use PDFJ 'SJIS';
# EUCの場合
use PDFJ 'EUC';
# UTF8の場合
use PDFJ 'UTF8';
# UNICODE(UCS2)の場合
use PDFJ 'UNICODE';
テキストオブジェクトを作る時に与える文字列や、フォントのエンコーディングでの日本語文字コードは、use PDFJ で指定したものと合致するようにしなければならない。
異なる文字コードを混在させたり切り替えて使用することはできない。
use PDFJ によって次のサブルーチンがエクスポートされる。
Doc
Text
TStyle
NewLine
Outline
Dest
Null
Space
Paragraph
PStyle
Block
BStyle
NewBlock
BlockSkip
Shape
SStyle
Color
まず最初に文書オブジェクトを作成しなければならない。
$docobj = PDFJ::Doc->new($version, $width, $height);
ここで、$versionはPDFのバージョン(※下記の注を参照)、$widthはページの幅、$heightはページの高さで、単位はポイント(1/72インチ)である。(ポイントの定義は定まったものがないが、PDFでは1/72インチとされている。1インチは25.4mm。)
なお、ページの幅と高さは、各ページオブジェクトを作成する時に個別に指定することもできる。
※PDFのバージョン
PDFのバージョンは、次のようにAcrobatやAcrobat Readerのバージョンと対応している。
PDFバージョン1.2 … Acrobatバージョン3
PDFバージョン1.3 … Acrobatバージョン4
PDFバージョン1.4 … Acrobatバージョン5
PDFバージョン1.5 … Acrobatバージョン6
PDFバージョン1.6 … Acrobatバージョン7
したがってAcrobat3でも使えるようにしたければ1.2にしておく。ただし、日本語TrueTypeフォントを使うときは1.3以上が必要。OpenTypeフォントを使う時は1.6以上が必要。Acrobat4以上で使えればよいということなら常に1.3にしておけばよい。
※データ埋め込み方法の指定
Compress::Zlibを使わずにデータの埋め込みをおこなう場合は、文書オブジェクトのfilterメソッドを用いて次のようにデータ埋め込み方法の指定をおこなっておく。この指定をしない場合はCompress::Zlibを使った埋め込みがおこなわれる。(作成されるPDFのサイズが変わる)。
$docobj->filter('a');
※オプションの指定
文書オブジェクトのsetoption()メソッドで、各種の処理の方法を切り替えるオプションを指定できる。具体的なオプションについては以下でその都度説明する。
ページは文書オブジェクトからnew_pageメソッドで追加される。幅と高さを省略すると文書オブジェクトの作成の際に指定したものが使われる。
$pageobj = $docobj->new_page;
$pageobj = $docobj->new_page($width, $height);
途中にページを挿入したいときはinsert_pageメソッドを用いる。
$pageobj = $docobj->insert_page($number);
$pageobj = $docobj->insert_page($number, $width, $height);
引数$numberでどの位置に挿入するか(0が先頭ページ)を指示する。
さらに、全画面表示した時の画面表示秒数(その時間経過したら自動的に次の画面に移る)と画面移行効果の指定ができる。
$pageobj = $docobj->new_page($width, $height, $dur, $trans);
$durが画面表示秒数、$transが画面移行効果。画面移行効果は、移行秒数、移行方法、オプション(複数可)をカンマで区切って並べる。移行方法は次のいずれか(デフォルトはR)。
Split … 二本の直線が動いて次の画面が現れる
Blinds … 等間隔の複数の直線が動いて次の画面が現れる
Box … 矩形領域が外から内あるいは内から外へ動いて次の画面が現れる
Wipe … 一本の直線が端から端へ動いて次の画面が現れる
Dissolve … モザイク上に前の画面が消えて次の画面が現れる
Glitter … Dissolveと似ているがモザイク領域が端から端へ動いて次の画面が現れる
R … 単に次の画面に切り替わる(移行秒数は無視される)
画面移行効果のオプションは次のいずれか(デフォルトはH,I,0)。
※Split,Blindsに対するオプション
H … 水平の直線
V … 垂直の直線
※Split,Boxに対するオプション
I … 外から内へ
O … 内から外へ
※Wipe,Glitterに対するオプション
0 … 左から右へ
90 … 下から上へ(Wipeのみ)
180 … 右から左へ(Wipeのみ)
270 … 上から下へ
315 … 左上から右下へ(Glitterのみ)
ページ番号は、pagenumメソッドで得られる。これで得られるページ番号は先頭が0でなく1であることに注意。insert_pageでページの挿入をおこなうとそれ以降のページ番号が変わることにも注意が必要。
$pagenum = $pageobj->pagenum;
フォントオブジェクトは、文書オブジェクトから、new_fontメソッドで作られる。
$fontobj = $docobj->new_font($basefont, $encoding);
$basefontはベースフォント名で、Type1フォントの場合次のいずれかを指定する。
※欧文フォント
Courier
Courier-Bold
Courier-BoldOblique
Courier-Oblique
Helvetica
Helvetica-Bold
Helvetica-BoldOblique
Helvetica-Oblique
Times-Bold
Times-BoldItalic
Times-Italic
Times-Roman
※和文フォント
Ryumin-Light
GothicBBB-Medium
$basefontにTrueTypeフォントのファイル名(拡張子が.ttf)を指定することで、TrueTypeフォントを指定することができる。また、TrueTypeCollectionフォント(拡張子が.ttc)の場合はその中の何番目(0から数えて)のフォントを使うかをファイル名の後ろに「:番号」として付加する。(例:「c:\windows\fonts\msgothic.ttc:0」)
$basefontにOpenTypeフォントのファイル名(拡張子が.otf)を指定することで、OpenTypeフォントを指定することができる。OpenTypeフォントを使用する時はPDFバージョンに1.6以上を指定すること。
※TrueTypeCollectionフォントは固定ピッチのフォントとプロポーショナルなフォントがセットになっていることが多いが、上記のようにして指定するのは固定ピッチの方でなければならない。付属のスクリプトttcinfo.plでTrueTypeCollectionフォントに含まれるフォント名を調べることができる。プロポーショナルなフォントはフォント名に P が付加されていることが多い。
※TrueTypeおよびOpenTypeフォントはPDFに埋め込まれる(和文フォントの場合はサブセットで)が、埋め込みを許可しないフォントも存在する。PDFJは、フォント自体の中にある埋め込みを許可するかどうかのフラグを見て、OKかどうかを判断する。ただし、別のライセンスファイルなどで使用許諾条件が示されている場合もありうるので、フォント作成者の権利を侵害しないように十分注意していただきたい。
※TrueTypeフォントを埋め込む際には、フォントファイル内にユニコードに対応したcmapテーブル(platformIDが3、platformSpecificIDが1、formatが4のもの)が必要である。古いTrueTypeフォントではこのcmapテーブルを持たないものも存在する。現状ではそういうTrueTypeフォントは埋め込むことができない。また、ユニコードの0x20000以降の拡張文字を使用する場合は、ucs4に対応したcmapテーブル(platformIDが3、platformSpecificIDが10、formatが12のもの)が必要。
$encodingはエンコーディングで、次のいずれかの定義済みエンコーディング名を指定する。省略すると、欧文フォントに対しては'WinAnsiEncoding'、和文フォントに対しては'90ms-RKSJ-H'が使われる。MacExpertEncodingはエキスパートフォントと呼ばれる特殊なフォントのためのエンコーディング。
※欧文フォントのエンコーディング
WinAnsiEncoding
MacRomanEncoding
MacExpertEncoding
※和文フォントのエンコーディング
83pv-RKSJ-H … Macintosh JIS X 0208 KanjiTalk6拡張
90pv-RKSJ-H … Macintosh JIS X 0208 KanjiTalk7拡張
90ms-RKSJ-H … Microsoft CP932 JIS X 0208 NEC,IBM拡張
90ms-RKSJ-V … 〃縦書き
Add-RKSJ-H … JIS X 0208 富士通FMR拡張
Add-RKSJ-V … 〃縦書き
Ext-RKSJ-H … JIS C 6226(JIS78) NEC拡張
Ext-RKSJ-V … 〃縦書き
EUC-H … JIS X 0208
EUC-V … 〃縦書き
EUC-NEC-H … JIS X 0208 NEC拡張
EUC-NEC-V … 〃縦書き
UniJIS-UCS2-HW-H … Unicode 横書き
UniJIS-UCS2-HW-V … Unicode 縦書き
UniJIS-UCS2-EXT-HW-H … Unicode(0x20000以降の拡張文字対応)横書き
UniJIS-UCS2-EXT-HW-V … Unicode(0x20000以降の拡張文字対応)縦書き
和文フォントのエンコーディングの末尾の'H'は横書き、'V'は縦書き。'RKSJ'とつくものはShift-JIS用、'EUC'とつくものはEUC用、'Uni'とつくものはUnicode用。日本語プロポーショナルフォントは使えないことに注意。欧文部分も含めてすべての文字が全角か半角の固定ピッチとなる。
※EUC-NEC-HとEUC-NEC-Vは、EUC-HとEUC-VをベースにNEC拡張文字(区点での13,89-92区)を加えたもので、PDFJで独自に定義したエンコーディングである(これを使ったPDFをAcrobatなどで開いてフォント情報を見るとエンコーディングは「カスタム」と表示される)。
※UniJIS-UCS2-EXT-HW-H と UniJIS-UCS2-EXT-HW-V は、UniJIS-UCS2-HW-H と UniJIS-UCS2-HW-V をベースに、0x20000以降の拡張文字に対応するようにPDFJで独自に定義したエンコーディングである(これを使ったPDFをAcrobatなどで開いてフォント情報を見るとエンコーディングは「カスタム」と表示される)。
※UTF8の場合もフォントエンコーディングには上記のUnicode用を指定すればよい。
new_fontメソッドにはもう一つの用法があり、つぎのようにして和文フォントと欧文フォントの組を指定する。
$fontobj = $docobj->new_font($jbasefont, $jencoding, $abasefont, $aencoding, $asize);
ここで、$jbasefontは日本語ベースフォント名、$jencodingはそのエンコーディング、$abasefontは欧文ベースフォント名、$aencodingはそのエンコーディング。$aencodingを省略するとWinAnsiEncoding。$asizeは欧文フォントの和文フォントに対するサイズ比率で、省略すると1。
このように和文フォントと欧文フォントを組み合わせたフォントオブジェクトをテキストに対して指定すると、テキスト中の日本語部分と欧文部分(正確に言うと0x7fまでのASCII文字の部分)に対してそれぞれのフォントが自動的に切り替えて適用される。これにより、欧文部分についてはプロポーショナルな表示となる。組フォントでは欧文フォントが適用されるのはASCII文字だけであり、ASCII文字についてはWinAnsiEncodingとMacRomanEncodingに違いはないので、組文字の欧文フォントのエンコーディングはどちらを指定しても同じ。
※use PDFJでUTF8またはUNICODEを指定した場合は、0x7fまでのASCII文字ではなく、0xffまでの文字に対して欧文フォントが適用される。この場合、欧文フォントのエンコーディングにはWinAnsiEncodingを指定しておくべきである。Unicodeでの0xffまでの文字はiso-8859-1と一致しており、WinAnsiEncodingはiso-8859-1の拡張になっている。
単独の欧文フォントを適用した文字列は、use PDFJ '…'で指定した日本語文字コードによらず、1バイト=1文字としてエンコーディングに従って表示される。
和文フォントの文字セットはAdobe-Japan1-4として扱われる。Adobe-Japan1-4には、大まかに言ってJIS X 0201と0208(第一水準、第二水準)、および各メーカーの拡張文字が含まれる。詳細は次を参照のこと。
http://partners.adobe.com/asn/developer/pdfs/tn/5078.Adobe-Japan1-6.pdf
最新の文字セットはAdobe-Japan1-6であり、これにはJIS X 0212(補助漢字)と0213(第三水準、第四水準)が含まれているが、今のところPDFJではAdobe-Japan1-6ではなくAdobe-Japan1-4が使われる。
上記のように、エンコーディング UniJIS-UCS2-EXT-HW-H と UniJIS-UCS2-EXT-HW-V を使用することで、ユニコード0x20000以降の拡張文字を扱うことができる(例えば上が土の吉)。この拡張文字はucs2(16ビット)には納まらないので、0xE001以降の領域に仮に割り当てて、それにフォントファイル内の文字コード(CID)が対応するように独自のCMAPをPDFに埋め込むことで対応している。従って、その結果生成されたPDFから再びテキストデータを取り出した場合には、拡張文字は元に戻らないことに注意。また、拡張文字を使用した場合、その文字を含むフォントを指定しなければその部分は表示されない。Ryumin-Light と GothicBBB-Medium を指定した場合は Adobe Reader などのPDF表示ソフトが実際に使用するフォントに依存するが、最近のAcrobatやAdobe ReaderではOK。Windows付属のフォントファイルでは、MS明朝やMSゴシックでは表示できない。メイリオではOK。
テキストオブジェクトは、Textサブルーチンで作成する。
$textobj = Text(@list, $textstyle);
ここで、@listは文字列、表示可能なオブジェクト、特殊オブジェクトのリストで、@listの要素が順に並べられた内容のテキストが作成される。$textstyleはテキストスタイルオブジェクト。
リストは配列参照の形で与えることもできる。
$textobj = Text([@list], $textstyle);
特殊オブジェクトには、改行オブジェクト、ヌルオブジェクト、アウトライン指示オブジェクト、リンク先オブジェクトがある。(アウトライン指示オブジェクト、リンク先オブジェクトについては後述。)
改行オブジェクトはNewLineサブルーチンで作成する(引数無し)。改行オブジェクトはテキストオブジェクトをそのまま表示する場合には何の効果もないが、段落オブジェクトを作る際に強制改行する効果をもたらす。
ヌルオブジェクトはNullサブルーチンで作成する。ヌルオブジェクトは表示上は何の効果もないが、行の折り返しの時にその位置で折り返し可能であることを指示する。半角のアルファベットと記号が続く部分は途中では折り返されないが、ヌルオブジェクトを挿入することでその位置で折り返しが可能となる。Null()の引数にハッシュを与えてテキストスタイルを指定できる(ヌルオブジェクト自体は表示されないので通常はこれは無意味であるが、後述するようにbeginindent、endindent、alignといった特殊なスタイルを指定するのに使用する)。
テキスト中の文字の間隔は組版ルールに基づいて自動的に処理されるが、特定の大きさの間隔を取りたい場合は、後述の空白オブジェクトを挿入すればよい。なお、半角空白が行頭や行末に来たときは組版ルールによって無視されるが、Spaceによる空白オブジェクトの場合は行頭や行末でも無視されることなく指定された間隔が取られる。
テキストスタイルオブジェクトはTStyleサブルーチンで作成する。
$textstyle = TStyle(%args);
引数にはハッシュリストの形で次のものを与える。fontとfontsizeは必須。その他はオプション。
font => フォントオブジェクト
fontsize => フォントサイズ(ポイント)
italic => イタリックフラグ(真を指定するとイタリックに)
bold => ボールドフラグ(真を指定するとボールドに)
slant => 斜体フラグ(真を指定すると斜体に)
render => 文字描画モード(0:塗り潰し、1:枠線、2:塗り潰し+枠線)
shapestyle => 文字描画の図形スタイルオブジェクト
rise => ベースラインの上調整値(ポイント)
vh => 縦中横フラグ(真を指定すると縦中横に)
withline => 下線または傍線フラグ(真を指定すると下線または傍線が付く)
withlinestyle => 下線または傍線の図形スタイルオブジェクト
withbox => 囲み枠指定(f:塗り潰し、s:枠線、sf:塗り潰し+枠線)
withboxstyle => 囲み枠の図形スタイルオブジェクト
withdot => 圏点フラグ(真を指定すると圏点が付く)
withnote => 注釈テキストオブジェクト
suffix => 添え字指定('u'を指定すると上添え字、'l'を指定すると下添え字)
ruby => ルビ文字列
objalign => 表示可能オブジェクトの配置
noglue => 文字種によって自動挿入される調整余白を入れない
noshift => 全角文字の字幅調整をおこなわない
code => 文字コード('SJIS'、'EUC'、'UTF8'、'UNICODE'のいずれか)
pageattr => このテキストが配置されるページにセットする属性をハッシュ参照で指定
filltext => 前の文字との間の余白に指定の文字列を繰り返して埋める
blockalign => 配列ブロック内での配置(b:左または上、m:中央、e:右または下、数値:インデント量)
slantによる斜体は機械的な変形による。欧文についてはItalic系のフォントを指定するほうが適切な字形が得られる。italicとboldについては、"イタリックとボールド"を参照。
renderやshapestyleの指定をしないと、文字は黒の塗り潰しで描画される。
withlineを指定してwithlinestyleを省略すると黒の実線となる。withboxを指定してwithboxstyleを省略すると黒の実線となる。
withnoteは文字の上や右に別のテキスト(そのテキストオブジェクトをwithnoteで指定する)を表示するものであり、suffixは指定した文字を小さくして位置を上下させる命令である。
※withnoteに文字列を与え、withnotestyleにテキストスタイルオブジェクトを与えることもできる。
rubyで指定したルビ文字列は親文字列のフォントサイズの半分のフォントサイズとなる。
ルビ文字列と親文字列の長さに差がある場合、短い方の文字列の前後と字間を、前:字間:後=1:2:1となるように配置する。ただし欧文単語は一字扱い。
ルビ文字列が親文字列より長くて、前の文字が始め括弧類、行頭禁則文字、分離禁止文字(―‥…)、全角空白、平仮名の場合、後の文字がが終わり括弧類、句点類、分離禁止文字、全角空白、平仮名の場合には、ルビ一文字分までを前や後の文字に重ねる。$PDFJ::Default{NoRubyOverlap}を真にセットすると、この重ね処理はおこなわれない。
objalignは、Textに画像や図形などの表示可能オブジェクトが与えられたときにどう配置するかをつぎのように指定する。objalignの指定を省略すると、横書きでは'b'、縦書きでは'c'とみなされる。
※横書きの場合(上下方向の配置の指定となる)
t … 文字とオブジェクトの上端をあわせる
m … 文字とオブジェクトの上下中央をあわせる
b … 文字とオブジェクトの下端をあわせる
※縦書きの場合(左右方向の配置の指定となる)
l … 文字とオブジェクトの左端をあわせる
c … 文字とオブジェクトの左右中央をあわせる
r … 文字とオブジェクトの右端をあわせる
noglueとnoshiftを真に指定すると、和文フォントの非ASCII文字は全角ベタ組みとなる。
codeは、use PDFJで指定した文字コードとは違う文字コードによるテキストを与えたいときに指定する。
pageattrは、そのテキストがページに配置されたときに、そのページに属性として名前と値の組を与えるために使う。セットされた属性はページオブジェクトのgetattr()メソッドで取り出せる。ページヘッダやフッタをページ内容に応じて変化させたい場合などに使う。
filltextは、後述する空白オブジェクトに対して指定して、長いリーダーを実現するために使う。
次のスタイルは本来は段落スタイルであるが、テキストスタイルとして指定すると、行を折り返して段落を作成するときにそこで段落スタイルを切り替えることができる。文字列にこのスタイルを指定するとその文字列自体が行をまたいだ場合に予期せぬ動作をするので、切り替える位置に前述のヌルオブジェクトを配置してそのスタイルとして指定するとよい。
beginindent => 行頭インデント
endindent => 行末インデント
align => 揃え(b:行頭揃え m:中央揃え e:行末揃え w:両端揃え W:強制両端揃え)
※beginindentは次の行から、endindentとalignはその行から、スタイルが指定のものに切り替わる。
テキストの一部分だけに特定のスタイルを適用したい場合、テキストオブジェクトを入れ子にして部分スタイルを指定することでおこなう。入れ子になったテキストオブジェクトでは子のスタイルで指定されていないスタイルは親のものが引き継がれる。
例えば、明朝のテキストの一部をゴシックにしたい場合、つぎのようにする。
$mincho = $docobj->new_font('Ryumin-Light', '90ms-RKSJ-H');
$gothic = $docobj->new_font('GothicBBB-Medium', '90ms-RKSJ-H');
$textobj = Text([
"明朝",
Text("ゴシック", TStyle(font => $gothic)),
"ここも明朝"
], TStyle(font => $mincho, fontsize => 10));
この場合、"ゴシック"に対するスタイルではfontsizeが指定されていないので、親スタイルのfontsizeの10が引き継がれる。
テキストの一部に下線を引く場合は、例えばつぎのようにする。
$mincho = $docobj->new_font('Ryumin-Light', '90ms-RKSJ-H');
$normal_style = TStyle(font => $mincho, fontsize => 10);
$uline_style = TStyle(withline => 1);
$textobj = Text([
"テキスト",
Text("下線付き", $uline_style),
], $normal_style);
テキストスタイルはこのように変数にセットしておいて使うこともできるし、先の例のように直接TStyleサブルーチンを使ってもよい。
テキストスタイルのitalicとboldを使うためには、どのフォントがどのフォントのイタリック形やボールド形である、ということをドキュメントオブジェクトに教えておいてやる必要がある。そのために、italic()とbold()メソッドを使う。例えば次のようにする。
$ft = $docobj->new_font('Times-Roman');
$fti = $docobj->new_font('Times-Italic');
$ftb = $docobj->new_font('Times-Bold');
$ftbi = $docobj->new_font('Times-BoldItalic');
$docobj->italic($ft, $fti, $ftb, $ftbi);
$docobj->bold($ft, $ftb, $fti, $ftbi);
このように、元フォント、その修飾フォント、の順で、二組以上をまとめて引数に与えることができる。組となるフォントは、欧文フォント同士、和文フォント同士、欧文フォントと組になった和文フォント同士、でなければならない。
Text('normal', Text('italic', TStyle(italic => 1)), TStyle(font => $ft))
このようなテキストオブジェクトを作ると、'normal'には$ftが、'italic'には$ftiが使われることになる。
italic()やbold()での登録がされていないフォントに対してitalicやboldのスタイルを与えた場合は、何の効果ももたらさない。
なお、一般に和文フォントにはイタリック形は存在しないので、和文フォントのテキストに対してテキストスタイルでitalicが指定された場合は、slantに置き換えて傾けて表示する。
段落オブジェクトはParagraphサブルーチンで作成する。
$paragraphobj = Paragraph($textobj, $parastyle);
ここで、$textobjはテキストオブジェクト、$parastyleは段落スタイルオブジェクト。複数のテキストを与えたいときはそれを一つのテキストオブジェクトにまとめた上で与える。
段落スタイルオブジェクトはPStyleサブルーチンで作成する。
$parastyle = PStyle(%args);
引数にはハッシュリストの形で次のものを与える。sizeとlinefeedとalignは必須。他はオプション。
size => 段落の行方向のサイズ(ポイント)
align => 揃え(b:行頭揃え m:中央揃え e:行末揃え w:両端揃え W:強制両端揃え)
linefeed => 行送り(ポイント)
preskip => 段落前の間隔(ポイント)
postskip => 段落後の間隔(ポイント)
objinbounds => 真だと先頭・末尾行の行内オブジェクトを段落内とする
blockalign => 配列ブロック内での配置(b:左または上、m:中央、e:右または下、数値:インデント量)
beginindent => 行頭インデント
endindent => 行末インデント
beginpadding => 行頭側の余白(ポイント)
labeltext => ラベルのテキストオブジェクト
labelsize => ラベルの行方向のサイズ(ポイント)
labelskip => ラベルと本文の間隔(ポイント)
nobreak => 真だとbreakメソッドで分割されない
postnobreak => 真だとブロックのbreakでその後ろで分割されない
float => 配列ブロックのbreakで位置を自動移動(「ブロックオブジェクトの分割」参照)
typename => タイプ名
linefeedで指定するのは行送りであって行間ではないことに注意。linefeed => '150%' のように 数値% と指定すると、テキストオブジェクトのフォントサイズに対する割合とみなされる。
linefeedに「s数値」または「s数値%」というオプションを付加して指定することができる。sオプションがあると、テキスト中にテキスト以外のオブジェクトが含まれている場合に、オブジェクトと隣の行との間隔を最低でもsオプションで指定しただけ取るように行送りが部分調整される。例えば linefeed => '150%s25%' と指定すると、通常の行間はフォントサイズの50%だが、オブジェクトと隣の行との間隔がフォントサイズの25%以上になるように調整される。これによって行中の大きなオブジェクトが隣の行と重なるのを防ぐことができる。
preskipとpostskipは、ブロック内に段落を並べる時の間隔として使われる。linefeedと同様、数値% と指定すると、テキストオブジェクトのフォントサイズに対する割合とみなされる。省略すると、それぞれ行間(行送りからフォントサイズを差し引いた長さ)の半分にセットされる。ハッシュ参照で {タイプ名 => 間隔,...} と指定すると、preskipならブロックないで前にある、postskipなら後にあるオブジェクトのタイプ名によって間隔を変えることができる。(タイプ名のないオブジェクトは'default'と見なす。)
objinboundsを真に指定した場合、先頭行や末尾行のテキスト中の非テキストオブジェクトが段落内に納まるように境界が調整されて、preskip、postskipによる間隔はその外側に取られる。objinboundsを指定せず、linefeedにsオプションを指定した場合は、objinboundsに1を指定したものとみなされる。
テキストは、(size - beginpadding - beginindent - endindent - labelsize)という行長を超えないように折り返し処理され、alignにしたがって揃えられる。wによる両端揃えの時、末尾行だけは行頭揃えとなる。Wによる強制両端揃えでは、末尾行も含めて両端揃えとなる。行の折り返しの際の禁則とハイフネーション、両端揃えの際の詰め伸ばしは、JIS X 4051にほぼ則っておこなわれる。
align、beginindent、endindentは配列参照の形で与えることができ、先頭行から順に使われる。行数が要素数より大きいときは最後の要素が繰り返し使われる。
beginpaddingは、ラベルも含めた段落全体の、行頭側に取る余白を指定する。(この余白はsizeの中に含まれる。)したがって、ラベルがないときは、beginpaddingの指定と単独要素のbeginindentの指定は同じ効果を持つ。
labeltextでテキストオブジェクトが指定されると、ラベルとして先頭行の前に表示される。ラベルと本文の間にはlabelskipだけの間隔が取られる。labeltextに文字列を与えると本体のテキストオブジェクトと同じテキストスタイルでテキストオブジェクト化される。
labeltextには、テキストオブジェクトを返すサブルーチン参照と、そのサブルーチンに与える引数のリストを、配列参照の形で与えることもできる。これによって番号付き箇条書きが実現できる。例えばつぎのようになる。
$LabelNum = 1;
sub numlabel {
my($fmt, $style) = @_;
Text(sprintf($fmt, $LabelNum++), $style);
}
$ol_style = PStyle(size => 500, align => 'w', labelsize => 30,
labeltext => [\&numlabel, "%d.", $normal_style]);
$para1 = Paragaph($text1, $ol_style);
$para2 = Paragaph($text2, $ol_style);
postnobreakとfloatは、この段落を含むブロックがbreakされるときに意味を持つ。
段落の行方向の大きさは段落スタイルのsizeで指定したものになるが、それと垂直な方向の大きさは行数(と行送りとフォントサイズ)で決まる。これが一定の大きさになるように段落を分割するために、breakメソッドが用意されている。例えば横書きの段落オブジェクト$paraに対して、
@paras = $para->break(200);
とすると、高さが200ポイント以下になるように分割した段落のリストが得られる。もし、最初の段落だけは高さを100以下にしたければ、つぎのようにすればよい。
@paras = $para->break(100, 200);
breakの引数に指定したサイズのリストは順に分割する段落のサイズとして使われ、なくなると最後のサイズが繰り返し使われる。
breakの引数に指定したサイズが小さすぎて、最後のサイズでも分割できない部分が残ったときは、分割に失敗したものとして未定義値が返される。
もし、$para->break(5, 200) のように最初や途中にフォントサイズより小さなサイズを指定すると、それに対応して空の段落オブジェクトが得られる。この例では、最初に空の段落オブジェクト、続いて200ずつに分割された段落オブジェクトが返されることになる。
段落スタイルのnobreakが真に設定されていると、分割されない。例えばnobreakな横書き段落オブジェクト$uparaがあり、その高さが150であるときに、$upara->break(100, 200) は (空段落オブジェクト, $uparaと同じオブジェクト) を返す。$upara->break(100) では分割に失敗して未定義値を返す。
Spaceサブルーチンで作成した空白オブジェクトを、テキストオブジェクトの要素して与えることで、文字の間に指定の空白を置くことができる。Space()の引数は空白のポイント数。例えば、
Text('なんたら',Space(20),'かんたら',TStyle(font => $font, fontsize => 10))
とすると、'なんたら'と'かんたら'の間に20ポイントの余白が取られる。縦書きでも横書きでも指定の大きさの余白が取られることに注意。
Space()では、第二引数として前の文字との間のグルー(行長の調節のために伸び縮みする間隔)を指定することができる。グルーは [通常値, 最小値, 最大値, 優先度] という配列参照として指定する。単位はそのテキストのフォントサイズ(ポイントでないことに注意)。優先度は整数値を指定し、行長の調整の際に値が大きいグルーが優先して伸び縮みさせられる。PDFJ組み込みの日本語組版ルールでは0~3の優先度が使われている。空白のポイント数とグルーの両方を指定すると、指定のポイント数の空白の前に指定のグルーが置かれることになる。例えば、
Text('なんたら',Space(10,[2,1,3,4]),'かんたら',
TStyle(font => $font, fontsize => 10))
とすると、'なんたら'と'かんたら'の間に通常は30ポイント、最小で20ポイント、最大で40ポイントの空白が置かれることになる。(グルーの単位はフォントサイズ=10ポイントであることに注意。)空白量が実際にどうなるかは、段落が作られる時に行の折り返し処理の中で決まってくる。
Space()の第三引数には、テキストスタイルを与えることができる。filltextを与えると、グルー内を指定の文字列を繰り返して埋めることができる。例えば、
Text('なんたら',Space(0,[3,3,3,4],TStyle(filltext=>'*'),'かんたら',
TStyle(font => $font, fontsize => 10))
とすると、'なんたら'と'かんたら'の間に30ポイントの空白が取られて、'*'で埋められる。
ブロックオブジェクトはBlockサブルーチンで作成する。
$blockobj = Block($direction, @objlist, $blockstyle);
ここで、$directionはブロックの種類と内容を並べる方向を指示する。$directionによって、配列ブロック、行列ブロック、ツリーブロックのどれになるかが決まる。@objlistはブロックの内容で、配列ブロックでは表示可能なオブジェクトのリスト、行列ブロックでは表示可能なオブジェクトの配列参照のリスト。ツリーブロックでは階層的に構成された配列参照のリスト(詳細は後述)。$blockstyleはブロックスタイルオブジェクト。
オブジェクトのリストはつぎのように配列参照の形で与えることもできる。
$blockobj = Block($direction, [@objlist], $blockstyle);
ブロックの種類と内容を並べる方向は、次のいずれかを指定する。
※配列ブロック
H … 左から右
R … 右から左
V … 上から下
※行列ブロック
HV … [左から右]を上から下へ
RV … [右から左]を上から下へ
VH … [上から下]を左から右へ
VR … [上から下]を右から左へ
※ツリーブロック
TH … 左が根のツリー
TR … 右が根のツリー
TV … 上が根のツリー
TU … 下が根のツリー
配列ブロックの場合、@objlistの各要素は表示可能なオブジェクトまたは改ブロックオブジェクトで、$directionで指定した方向に並べられる。各要素の間隔については後述。
行列ブロックの場合、@objlistの各要素は配列参照でなければならず、各配列参照が行を表すことになる。$directionがHVとRVの場合は行が横方向、列が縦方向であるが、VHとVRの場合は行が縦方向、列が横方向となることに注意。
ツリーブロックの場合、@objlistの各要素はツリーの根となり、親子関係は親要素の後に子のリストを配列参照の形で置くことで表現する。例えば
A┬B┬C
│ └D
└E
のようなツリーは、
Block('TH', $Aobj, [$Bobj, [$Cobj, $Dobj], $Eobj], $style)
のようになる。
ブロックスタイルオブジェクトはBStyleサブルーチンで作成する。
$blockstyle = BStyle(%args);
引数にはハッシュリストの形で次のものを与える。
width => 幅(ポイント)
height => 高さ(ポイント)
padding => 周囲余白(ポイント)
align => 揃え(l:左、c:中央、r:右、と、t:上、m:中央、b:下、の組み合わせ)
withbox => 囲み枠指定(f:塗り潰し、s:枠線、sf:塗り潰し+枠線)
withboxstyle => 囲み枠の図形スタイルオブジェクト
preskip => 前の間隔(ポイント)、'c'を指定すると先頭オブジェクトのpreskip
postskip => 後の間隔(ポイント)、'c'を指定すると末尾オブジェクトのpostskip
blockalign => 配列ブロック内での配置(b:左または上、m:中央、e:右または下、数値:インデント量)
typename => タイプ名
nobreak => 真だとbreakで分割されない
postnobreak => 真だとブロックのbreakでその後ろで分割されない
repeatheader => breakで分割するとき先頭で繰り返す要素数
float => 配列ブロックのbreakで位置を自動移動(「ブロックオブジェクトの分割」参照)
colspan => 行列ブロックの要素となったとき指定数の列幅を持つものと扱われる
rowspan => 行列ブロックの要素となったとき指定数の行幅を持つものと扱われる
※以下は配列ブロックで有効
adjust => サイズ調整フラグ
nofirstfloat => 真だとbreakで先頭にはfloat要素を置かない
bfloatsep => floatがbの要素とそれ以外の要素の間に挿入される表示可能オブジェクト
efloatsep => floatがeの要素とそれ以外の要素の間に挿入される表示可能オブジェクト
※以下は行列ブロックで有効
adjust => サイズ調整フラグ
rowskip => 行間隔
colskip => 列間隔
※以下はツリーブロックで有効
adjust => サイズ調整(l:親子方向、s:兄弟方向)
siblingalign => 揃え(b:左または上、m:子の中央、M:子孫の中央、e:右または下)
levelskip => 親子間隔
siblingskip => 兄弟間隔
connectline => 親子接続線(s:直線、c:クランク線)
connectlinestyle => 親子接続線の図形スタイルオブジェクト
width、heightで幅や高さを指定した場合、内容の幅や高さがそれより大きい場合は内容に合わせられる。内容よりも指定した幅や高さが大きい場合は、alignにしたがって位置が揃えられる。
alignによる揃えは、ブロック内で内容をどう配置するかを指定するもので、次のいずれかを組み合わせて指定。省略すると'tl'とみなされる。配列ブロックでは、内容のオブジェクト自身のスタイルでblockalignが指定されているとそちらが優先される。
※左右方向
l … 左寄せ
c … 中央寄せ
r … 右寄せ
※上下方向
t … 上寄せ
m … 中央寄せ
b … 下寄せ
paddingは内容の周りに取られる余白の幅であり、withboxで囲み枠を指定した場合はその余白の外側に描画される。
withboxでは、's','f','sf'の他に、'rX'(Xは数値)を付加すると角が半径Xで丸くなる。
adjustは、要素となるオブジェクトがブロックである場合に、その大きさが揃うように調整する指定である。配列ブロックでは、adjustを真に指定すると、HとRの場合は要素ブロックの高さ、Vの場合は要素ブロックの幅をもっとも大きいものに揃える。行列ブロックでは、adjustを真に指定すると、HVとRVでは行内の高さと列内の幅、VHとVRでは行内の幅と列内の高さを、もっとも大きいものに揃える。ツリーブロックでは、adjustにl(英小文字のエル)を指定すると親子方向の大きさを揃える。sを指定すると、兄弟方向の大きさを子孫の大きさに合わせる。
行列ブロックでは、widthsとheightsというメソッドで、行幅と列高さ(HVとRVの場合)または列幅と行高さ(VHとVRの場合)を配列参照の形で得ることができる。
行列ブロックでは、rowskipスタイルで行間隔、colskipスタイルで列間隔を指定できる。ツリーブロックでは、levelskipで親子間隔、siblingskipで兄弟間隔が指定できる。
行列ブロックの要素は通常は各々が行と列の交点に位置を占めるが、要素がブロックでcolspanやrowspanスタイルを指定してあれば、複数の列幅や行幅を占めるようにすることができる。言い換えれば、colspanは行方向に複数のセルを結合する指定、rowspanは列方向にセルを結合する指定と言える。なお、colspanやrowspanスタイルを指定できるのはブロックオブジェクトのみで、その他の表示可能オブジェクトはみなcolspanもrowspanも1とみなされる。
ツリーブロックのsiblingalignスタイルは、親要素の兄弟方向の位置が子孫に対してどのように配置されるかを指定するもので、TV,TUでは b:左、m:子の中央、M:子孫の中央、e:右 となり、TH,TRでは b:上、m:子の中央、M:子孫の中央、e:下 となる。省略すると'b'とみなされる。
ツリーブロックのconnectlineスタイルは、親要素の子側中央と、子要素の親側中央を、線で結ぶ指定。's'で直線、'c'でクランク線(親子方向と兄弟方向の直線をつなげた折れ線)となる。connectlinestyleはその線の図形スタイルを指定し、省略すると黒の実線となる。
配列ブロック内のオブジェクトの間隔は、前のオブジェクトのpostskipと後ろのオブジェクトのpreskipを加算したものになる。また、Spaceサブルーチンで作成する空白オブジェクトで間隔を取ることもできる。オブジェクトリストの要素に数値があるとそのサイズの空白オブジェクトに変換される。
先頭要素のpreskipと末尾要素のpostskipはブロック内では無視されるが、ブロック自体のpreskipやpostskipに'c'を指定すると先頭要素のpreskipや末尾要素のpostskipがブロック自体のpreskipやpostskipになる。
preskipやpostskipが数値の場合は、その通りの間隔が取られるが、ハッシュ参照の場合は、preskipなら前の、postskipなら後のオブジェクトのタイプ名に応じて間隔を選択することになる。表示可能オブジェクトのタイプ名は、typenameメソッドで設定できるほか、段落、ブロック、図形の各スタイルで与えることができる。タイプ名が設定されていないオブジェクトのタイプ名は'default'と見なされる。タイプ名には任意の文字列が指定できるが、英小文字で始まる名前はPDFJ自体が使用するので、ユーザーが設定するタイプ名は英大文字で始まるものにすべきである。
例えば次のようにした場合、
$para1 = Paragraph($text1, PStyle(size => 200, align => 'w',
linefeed => '150%'));
$para2 = Paragraph($text2, PStyle(size => 200, align => 'w',
linefeed => '150%', typename => 'Para2',
preskip => {default => '25%', Para2 => '75%'},
postskip => {default => '25%', Para2 => '75%'}));
配列ブロックの中で$para1同士の間隔はフォントサイズの50%($para1ではpreskipとpostskipが指定されていないので、linefeed=150%から計算されてそれぞれ25%となる)になる。$para1と$para2の間隔は、$para2側は'default'の値25%が使われて、やはり50%になる。$para2同士の間隔は、preskipやpostskipに'Para2'の値75%が使われて、100%になる。
以上はあくまで配列ブロックについてのもので、行列ブロックでは行列ブロックのスタイルで指定した行間隔、列間隔が一律に取られる。preskipとpostskipに'c'を指定することもできない。
段落オブジェクトと同様に、配列ブロックオブジェクトと行列ブロックオブジェクトもbreakメソッドによって分割ができる。(ツリーブロックオブジェクトは分割できない。)例えば方向が'V'の配列ブロックオブジェクト$blockを高さが200ポイント以下になるように分割したければ、
@blocks = $block->break(200);
とすればよい。最初のブロックだけ高さを100以下にしたければ、つぎのようにする。
@blocks = $block->break(100, 200);
breakの引数に指定したサイズのリストは順に分割したブロックのサイズとして使われ、なくなると最後のサイズが繰り返し使われる。
配列ブロックの分割の際、ブロック内のオブジェクトとして、方向の同じブロックや、行方向の異なる段落('V'なら'H'、'H'や'R'なら'V')があると、そのオブジェクトも分割することでできるだけ指定のサイズに合うように分割される。
行列ブロックの分割は、行単位で行われる。breakで指定したサイズは、HVとRVでは縦方向のサイズを、VHとVRでは横方向のサイズを意味することになる。rowspanによって結合されている部分があると、その途中では分割されない。
指定したサイズで分割ができなかった場合、breakメソッドは未定義値を返す。複数のサイズを指定した場合に、最後以外のサイズが小さすぎた場合は、それに対応するものとして空のブロックが返される。
ブロックスタイルで nobreak が真になっていると、そのブロックは分割されない。
配列ブロックの中にNewBlockサブルーチンで作成される改ブロックオブジェクトがあると、ブロックの分割の際にそこで強制的に分割される。
配列ブロックの分割の際、その要素となるブロックや段落や図形のスタイルで postnobreak が真に設定されていると、その後ろで分割されることはない。これによって、見出し段落と本文段落が別ページに分かれることを防ぐことができる。行列ブロックの場合は、行の末尾要素のpostnobreakが真であればその行の後では分割されない。
配列ブロックの分割の際、その要素となるブロックや段落や図形のスタイルで float が設定されていると、その要素は分割されたブロック内で指定の位置に移動される。float機能は行列ブロックでは働かない。
float指定の意味は次のとおり。
bN:分割されたブロックの先頭(Nは1~9または省略)
eN:分割されたブロックの末尾(Nは1~9または省略)
h:分割せずに可能ならその位置に、無理なら次のブロックの先頭に
bとeの後ろに1~9の番号を付けて数字別にグループ化できる。数字の大きなものほど先頭または末尾寄りに配置される。b0やe0とはせずにbやeとすることに注意。
配列ブロックのブロックスタイルでnofirstfloatを真に指定すると、breakの際に全体の先頭にはfloat要素を置かない。
配列ブロックのブロックスタイルのbfloatsepで表示可能オブジェクトを指定すると、floatがbで先頭に移動した要素群の後に挿入される。efloatsepで指定したオブジェクトはfloatがeで末尾に移動した要素群の前に挿入される。これにより、floatをeとしてページ末尾に移動した脚注段落と本文段落の間に区切り線を入れるようなことができる。floatにbNやeN(Nは1~9)を使う場合は、bfloatsepやefloatsepに配列参照の形でオブジェクトのリストを与えると、そのN番目のものが使われる(bやeには0番目のものが使われる)。なお、bfloatsepやefloatsepに使うオブジェクトはそれ専用に使用し、分割されるブロックの内容として使ってはならない。また、bfloatsepに使うオブジェクトとefloatsepに使うオブジェクトも異なるオブジェクトでなければならない。
ブロックスタイルで repeatheader が指定されていると、その値の数だけの先頭要素が、分割された各ブロックの先頭で繰り返される。(ただし先頭要素の途中や後ろで分割された場合は除く。)これによって表の先頭の項目名の行を繰り返すことができる。先頭要素自体が分割されるとおかしな結果が得られるので、先頭要素が分割可能な段落やブロックの場合は nobreak を指定しておくこと(方向の違うブロックの場合は不要)。また先頭要素と次の要素が分割された場合も不適切な結果となるので、先頭要素には postnobreak の指定をしておくこと。repeatheader機能は配列ブロックでも行列ブロックでも有効。
画像オブジェクトはJPEG画像またはPNG画像についてのみ作成でき、文書オブジェクトからnew_imageメソッドで作成する。
$imgobj = $docobj->new_image($src, $pxwidth, $pxheight,
$width, $height, $padding, $colorspace, $type);
ここで、$srcはJPEG画像の場合はURLまたはファイル名(拡張子は.jpgまたは.jpegであること)、PNG画像の場合はファイル名(拡張子は.pngであること)、$pxwidthと$pxheightは画像のピクセルサイズ、$widthと$heightは表示サイズ(ポイント)、$paddingは周囲の余白(ポイント)、$colorspaceはカラースペース(rgb,gray,cmykのいずれかで省略するとrgb)。$typeはjpgまたはpngを指定するが、拡張子から判別できる場合は省略できる。$paddingと$colorspaceは省略できる。PNG画像の場合は画像のピクセルサイズとカラースペースは画像ファイル自体の内容に従って自動的に設定されるので、$pxwidth、$pxheight、$colorspaceで指定した値は無視される。
$srcにスカラ参照による画像データを与えることもできる。そのときは必ず$typeにjpgまたはpngを指定する。$srcにURLやファイル名を指定するときはその拡張子から判断されるので$typeの指定は不要。
現在の仕様では、URL指定した場合は生成されるPDFにはURL情報だけが埋め込まれ、表示する際にAcrobatReaderがそのURLにアクセスして画像内容を読みとる。したがって表示に時間がかかったり、アクセスできないと画像が表示できないといったことが起こりうる。
ファイル名指定やスカラ参照で画像データを与えた画像の場合は、生成されたPDFに画像内容そのものがデータとして埋め込まれるので、元の画像ファイルをPDFファイルと一緒に配布したりする必要はない。
画像オブジェクトには他の表示可能なオブジェクトと違ってスタイルの指定はない。ブロックに含める際にpostnobreakを指定したいというようなときは、図形オブジェクトの中に画像オブジェクトを含めて、その図形オブジェクトにスタイルを指定する。
図形オブジェクトはShapeサブルーチンで作成する。
$shapeobj = Shape($shapestyle);
ここで$shapestyleは図形スタイルオブジェクト。$shapestyleは省略できる。これだけでは何も中味のない図形オブジェクトが作られるだけである。その後、次のメソッドを使って図形を加えていく。
$shapeobj->line($x, $y, $w, $h, $style);
($x,$y)から($x+$w,$y+$h)へ直線が引かれる。$styleは図形スタイルオブジェクトで、省略可能。
$shapeobj->box($x, $y, $w, $h, $spec, $style);
($x,$y)と($x+$w,$y+$h)を対角とする矩形が描かれる。$styleは図形スタイルオブジェクトで、省略可能。$specは次の描画指定。
f … 塗り潰しのみ
s … 枠線のみ
sf … 塗り潰し+枠線
n … 描画しない
※上記のsの代わりに、l(左辺)、r(右辺)、t(上辺)、b(下辺)、の組み合わせも可
※次はオプション
rX … (Xは数値)角を半径Xで丸くする
box()に対する$styleでは、通常の図形スタイルに加えて次のスタイルが使える。("ハイパーリンク"を参照)
link => リンク先(文書内のリンク先名または、URI:を付けたURI名)
$shapeobj->circle($x, $y, $r, $spec, $arcarea, $style);
($x,$y)が中心、$rが半径の円が描かれる。$arcareaは四半円指定(1:右上、2:左上、3:左下、4:右下)で省略すれば全円。$styleは図形スタイルオブジェクトで、省略可能。$specは次の描画指定。
f … 塗り潰しのみ
s … 枠線のみ
sf … 塗り潰し+枠線
$shapeobj->ellipse($x, $y, $xr, $yr, $spec, $arcarea, $style);
$xrが横半径、$yrが縦半径であることを除けば円と同じ。
$shapeobj->polygon([@coords], $spec, $style);
@coordsは頂点の座標のXとYの組を順に並べたリスト。$styleは図形スタイルオブジェクトで、省略可能。$specは次の描画指定。
f … 塗り潰しのみ
s … 枠線のみ
sf … 塗り潰し+枠線
$shapeobj->arc($x, $y, $r, $start, $end, $spec, $style);
($x,$y)が中心、$rが半径、開始角$start、終了角$endの円弧または円弧と半径で囲まれた領域が描かれる。開始角、終了角はラジアン。$styleは図形スタイルオブジェクトで、省略可能。$specは次の描画指定。$specがaの時は円弧のみ、その他の場合は円弧と半径で囲まれた領域が描画される。
a … 円弧のみ
f … 塗り潰しのみ
s … 枠線のみ
sf … 塗り潰し+枠線
$shapeobj->obj($obj, @showargs);
図形中に表示可能なオブジェクト$objを、$obj->show($page, @showargs)によって配置する。
以上のメソッドはみなオブジェクト自身を返すので、
$shapeobj = Shape->line(…)->box(…)->obj(…);
のように記述することも可能。
以上のメソッドで描画する場合は、結果としてその図形オブジェクトが上下左右にどれだけの範囲を占めるかという全体としての図形の大きさが内部的に管理され、幅と高さを持った表示可能オブジェクトとして扱うことができる。
これら以外のプリミティブな描画メソッドもある(PDFJ::Shapeのメソッド一覧を参照)が、それらのメソッドを使った場合は図形オブジェクトの大きさの管理はおこなわれないことに注意が必要。
図形スタイルオブジェクトは、SStyleサブルーチンで作成する。
$shapestyle = SStyle(%args);
引数にはハッシュリストの形で次のものを与える。
fillcolor => 塗り潰し色(色オブジェクト)
strokecolor => 線色(色オブジェクト)
linewidth => 線幅(ポイント)
linedash => [$dash, $gap, $phase] または "$dash, $gap, $phase"
preskip => 前の間隔(ポイント)
postskip => 後の間隔(ポイント)
postnobreak => 真だとブロックのbreakでその後ろで分割されない
float => ブロックのbreakで位置を自動移動(「ブロックオブジェクトの分割」参照)
typename => タイプ名
blockalign => 配列ブロック内での配置(b:左または上、m:中央、e:右または下、数値:インデント量)
linedashの指定で、$dashは破線長、$gapは隙間長、$phaseは開始位置。$phaseは省略可能。
preskip、postskip、postnobreak、floatは、ブロックの中に図形オブジェクトを置くときに意味を持つ。
box()に対する$styleでは、上記の図形スタイルに加えて次のスタイルが使える。
link => リンク先(文書内のリンク先名または、URI:を付けたURI名)
use PDFJ::Shape; すると、次の追加の図形描画メソッドがPDFJ::Shapeに追加される。これらのメソッドはいずれもオブジェクト自身を返す。また、描画範囲の管理がおこなわれる。
$shapeobj->arrow($x, $y, $w, $h, $headsize, $headangle, $style);
$headsizeと$headangle以外の引数はlineと同じ。直線の終端に、長さが$headsize、先端角度の半分が$headangle(ラジアン)の三角形の鏃が付けられる。
$shapeobj->brace($x, $y, $w, $h, $style);
引数の意味は矩形と同じ。その矩形の中に納まる波括弧を描画する。$wが正なら開き括弧、負なら閉じ括弧。文字の{}では間に合わない大きな波括弧が必要な場合に使用する。
$shapeobj->bracket($x, $y, $w, $h, $style);
引数の意味は矩形と同じ。その矩形の中に納まる角括弧を描画する。$wが正なら開き括弧、負なら閉じ括弧。文字の[]では間に合わない大きな角括弧が必要な場合に使用する。
$shapeobj->paren($x, $y, $w, $h, $style);
引数の意味は矩形と同じ。その矩形の中に納まる丸括弧を描画する。$wが正なら開き括弧、負なら閉じ括弧。文字の()では間に合わない大きな角括弧が必要な場合に使用する。
色オブジェクトは、Colorサブルーチンで作成する。
$colorobj = Color($r, $g, $b);
$colorobj = Color('#RRGGBB');
$colorobj = Color($g);
三引数の場合、$rは赤、$gは緑、$bは青のそれぞれの割合(0から1までの範囲の数値)。
一引数で、#で始まる16進6桁の文字列の場合、二桁ずつ赤、緑、青の割合(00からffまで)とみなされる。
一引数で、数値の場合は、グレーの割合(0から1までの範囲の数値)。0が黒、1が白。
表示可能なオブジェクトをページ上に配置するには、showメソッドを用いる。
$obj->show($page, $x, $y, $align, $transtype, @transargs);
ここで、$pageはページオブジェクト、$x、$yは表示位置、$alignは配置、$transtypeは変形の種類、@transargsは変形のパラメータである。$align以降の引数は省略できる。
表示位置の座標は、ページの左下隅が原点(0,0)となり、X座標は右へ、Y座標は上へ向かって増加する。単位はポイントである。
配置$alignは、($x,$y)で指定した表示位置に対して、オブジェクトをどのように配置するかを指定するもので、次の横位置と縦位置を組み合わせて指定する。
横位置
l … オブジェクトの左端を$xにあわせる
c … オブジェクトの中央を$xにあわせる
r … オブジェクトの右端を$xにあわせる
縦位置
t … オブジェクトの上端を$yにあわせる
m … オブジェクトの中央を$yにあわせる
b … オブジェクトの下端を$yにあわせる
配置$alignの指定を省略すると、そのオブジェクト固有の原点を($x,$y)にあわせる。各オブジェクトの固有の原点は次のとおり。
横書きテキスト … 先頭文字の左端の、下端から高さの0.125倍だけ上の位置
縦書きテキスト … 先頭文字の上端の、左右中央の位置
段落 … 先頭行テキストの固有の原点
ブロック … 左上隅
画像 … 左下隅
図形 … 描画命令の原点がそのまま原点となる
showメソッドに、$transtype以降の引数を与えると、表示の際に変形することができる。変形の種類$transtypeとそのパラメータ@transargsには次のいずれかを指定する。
'magnify', $mx, $my … 横方向に$mx倍、縦方向に$my倍、拡大・縮小する
'rotate', $rad … 反時計回りに$radラジアンだけ回転する
'distort', $xtan, $ytan … (1,0)を(1,$xtan)へ、(0,1)を($ytan,1)へ移すように、横軸、縦軸をそれぞれ傾ける
各変形は、showメソッドの$xと$yの引数で決まる位置を原点としておこなわれる。
なお、表示可能なオブジェクトにはwidthとheightというメソッドがあり、幅と高さを知ることができる。
showメソッドで表示可能オブジェクトをページに配置していくと、後から配置したものが手前に配置されて、前に配置されたものに重なっていく。
この重なりの順序を制御したい場合のために、ページオブジェクトにlayerメソッドが用意されている。
$pageobj->layer($layernum);
$layernumはレイヤ番号で、0以上の整数値。layerメソッドを実行すると、それ以降の描画は指定したレイヤ番号のレイヤに対しておこなわれる。
ページの内容が表示されるときには、レイヤ番号の順番に配置される。
ミニページオブジェクトは、文書オブジェクトから、new_minipageメソッドで作成する。
$minipageobj = $doc->new_minipage($width, $height, $padding);
ここで、$widthは領域の幅、$heightは領域の高さ、$paddingは領域の外側に取る余白の大きさで、いずれもポイント数で指定する。
ミニページオブジェクトに対して表示可能なオブジェクトを配置するには、ページに対する時と同様にshowメソッドを用いる。
$obj->show($minipageobj, $x, $y, $align, $transtype, @transargs);
レイヤ指定もページと同様に可能である。
$minipageobj->layer($layernum);
ミニページオブジェクトをページに配置することで、ミニページ内に配置したオブジェクトが実際に表示されることになる。ミニページの領域の外にはみ出した部分は表示されない。
$minipageobj->show($pageobj, $x, $y, $align, $transtype, @transargs);
直接入れ子になったテキストオブジェクトのテキストスタイルに関しては、親子関係による内容の継承がおこなわれるので、部分スタイルの指定ができる。それ以外の場合にスタイルの自動的な継承がおこなわれることはない。
既存のスタイルを元にして属性を変更したり追加したりしたスタイルを作成したい場合、cloneメソッドを用いる。このメソッドはテキストスタイル、段落スタイル、ブロックスタイル、図形スタイルのすべてについて使える。
$newstyle = $originalstyle->clone(%newargs);
%newargsを指定しなければ単にコピーが作られる。%newargsで指定した属性は元の属性を上書きする(元の属性がなければ追加される)。
%newargsのstyleキーの値として既存のスタイルを与えることもできる。styleとその他の属性の両方を指定した場合はまずstyleの内容が上書きされてからその他の属性が上書きされる。
各種のスタペpe1フォントの場合次のいずれかを指定する。
※欧文フォント
Courier
Courier-Bold
Courier-BoldOblique
Courier-Oblique
Helvetica
Helvetica-Bold
Helvetica-BoldOblique
Helvetica-Oblique
Times-Bold
Times-BoldItalic
Times-Italic
Times-Roman
※和文フォント
Ryumin-Light
GothicBBB-Medium
$basefontにTrueTypeフォントのファイル名(拡張子が.ttf)を指定することで、TrueTypeフォントを指定することができる。また、TrueTypeCollectionフォント(拡張子が.ttc)の場合はその中の何番目(0から数えて)のフォントを使うかをファイル名の後ろに「:番号」として付加する。(例:「c:\windows\fonts\msgothic.ttc:0」)
$basefontにOpenTypeフォントのファイル名(拡張子が.otf)を指定することで、OpenTypeフォントを指定することができる。OpenTypeフォントを使用する時はPDFバージョンに1.6以上を指定すること。
※TrueTypeColleWェクトを取る属性(属性名がcolorで終わる)については、属性値をオブジェクトでなくハッシュ参照や文字列で与えることができる。
TStyle(withline => 1, withlinestyle =>
{linewidth => 0.5, linedash => '2,2', strokecolor => '#ff0000'})
作成したPDF文書をファイルに出力するには、文書オブジェクトのprintメソッドを用いる。
$docobj->print($filename);
ファイル名$filenameの拡張子は、通常は.pdfとする。
ファイル名として '-' を指定すると標準出力に出力される。
また、print()の引数にファイル名でなく書き込み用にオープン済のファイルハンドルを与えることができる。ファイルハンドルはグロブリファレンス(\*STDOUT のような)か、ファイルハンドルオブジェクト(IO::Handleから派生したクラスのオブジェクト)で指定する。
スカラ変数にPDF文書の内容を格納したい場合は、Perl5.8以降であればスカラ入出力機能を使って次のようにするとよい。Perl5.8未満の場合はIO::Scalarモジュールを使えばよい。
my $pdf;
open my $fh, '>', \$pdf;
$doc->print($fh);
close $fh;
PDFには文書のタイトル、作成者、キーワードなどの文書情報を入れることができる。これをおこなうには、次のようにadd_info()メソッドを用いる。
$docobj->add_info(Title => 'タイトル', Author => '作成者');
指定できるキーは次のものがある。
Title => 文書のタイトル
Author => 文書の作成者名
Subject => 文書の主題
Keywords => 文書に関連するキーワード
Creator => 文書を作成したアプリケーション名
なお、Producerキーには「PDFJ バージョン」が、CreationDateキーには作成日時(標準時)が自動的にセットされる。
PDFにはアウトラインという目次機能がある(しおりとも言う)。アウトラインの項目をマウスでクリックするとその項目で指定された位置が表示される。アウトラインは階層的に構成され、章や節などの見出しをアウトラインに対応させることが多い。
PDFJで文書にアウトラインを付加するには、テキストオブジェクトを作成する際に、対象の文字列やオブジェクトの前にアウトライン指示オブジェクトを置く。アウトライン指示オブジェクトは Outline() サブルーチンで作成する。例えば、「はじめに」という見出しをアウトラインのトップレベルに加えたい場合、つぎのようにする。
Text(Outline('はじめに'), 'はじめに', $midasi_style)
このテキストオブジェクトがページに配置されると、文書のアウトラインに「はじめに」という項目が作られてこの「はじめに」というテキストの左上の位置が指定される。この例ではアウトライン項目とテキストの文字列を同じにしているが、異なる文字列を指定してもよい。
1レベル下の「本書の内容」という見出しをアウトラインに加えたい場合、つぎのようにする。
Text(Outline('本書の内容', 1), '本書の内容', $midasi_style)
Outline() の2番目の引数には、アウトラインの階層レベルを指定する。レベル 0 は上記の「はじめに」の例のように省略できる。
アウトラインは、Outline()を含んだテキストオブジェクトがページに配置されるときに順に追加されて作られていく。いまのところ、既存のアウトラインの途中に挿入する手段は用意されていない。レベル0の項目の次にレベル2の項目を作るなど、階層のギャップが生じると、ギャップを埋めるための空文字列によるアウトライン項目が作られる。
文書オブジェクトのoutlinetree()メソッドで、アウトラインツリーを得ることができる。
$tree = $docobj->outlinetree()
アウトラインツリーは、[タイトル, ページオブジェクト, X位置, Y位置, 子ツリー] を要素とした配列参照である。ページオブジェクトからpagenum()メソッドでページ番号がわかるので、タイトルとページ番号の対応を知ることができる。
PDFにはハイパーリンク機能があり、ページ上のリンク元に指定された領域をクリックすると、そのリンク先が表示される。リンク先としては、同じ文書内の場所、別の文書の場所、URI(http:などで始まるインターネット上の場所と考えればよい)があるが、今のところPDFJでは同じ文書内の場所とURIに対応している。
同じ文書内でのリンクを作るには、リンク先のテキストにDest()サブルーチンで名前を指定して作成したリンク先オブジェクト(PDFJ::Destオブジェクト)を配置する。例えば
Text(Dest('dest'),'リンク先',TStyle(…))
とすると、'リンク先'というテキストの前に'dest'という名前のリンク先が作られる。Dest()で作られるPDFJ::Destオブジェクト自体は、表示には現れない。リンク先の名前は任意の文字列が使えるが、「URI:」で始まるものはURIへのリンクのために使われる。
※同じ名前のリンク先を作ると後の方が実際のリンク先となる。名前の重複がないように管理するのはユーザーの責任である。
リンク元では矩形の図形オブジェクトの図形スタイルのlinkでリンク先名を指定するか、テキストスタイルのwithboxstyleで同様にlink指定をする。例えば
Shape->box(0,0,100,50,'s',SStyle(link => 'dest'))
とすると、横100ポイント、縦50ポイントの矩形が作られて、その内部をクリックすると名前が'dest'のリンク先に飛ぶ。テキストの場合は、
Text('ここをクリック', TStyle(withbox => 'n',
withboxstyle => SStyle(link => 'dest')))
のようにすればよい。このようにwithbox => 'n' とすると矩形は描画されない。リンクであることを示すために色を変えるとか下線を付けるとかいった工夫はユーザーに任されている。(withbox => 'b' で下線を付けることができる。)
リンク先としてDest()で登録した名前を使わず、ページ番号とX位置、Y位置の組み合わせで直接指定したい場合は、「PAGE:ページ番号,X位置,Y位置」とする(ページ番号は1から数える)。例えば、
Text('10ページ', TStyle(withbox => 'n',
withboxstyle => SStyle(link => 'PAGE:10,72,770')))
とすれば、10ページ目のX位置72、Y位置770へのリンクとなる。
また、ページオブジェクトとX位置、Y位置の組み合わせで指定したい場合は、link属性に [ページオブジェクト,X位置,Y位置] という配列参照を指定する。
URIリンクの場合は、Dest()によるリンク先の設定は必要なく、リンク先の名前として、「URI:」に続けてURIを書けばよい。例えば
Text('米アドビ', TStyle(withbox => 'n',
withboxstyle => SStyle(link => 'URI:http://www.adobe.com/')))
のようにする。
URIはすでにURIエンコードされていない限りURIエンコードされる。
Destオブジェクトがページに配置されると、その名前とページオブジェクトとの対応が文書オブジェクトに登録される。文書オブジェクトのdestpage()メソッドでその情報を取り出すことができる。
$pages = $docobj->destpage($name)
とすれば、名前が$nameのDestオブジェクトが配置された [ページオブジェクト, X位置, Y位置] のリストが配列参照として得られる。同じ名前のDestが複数あれば複数の要素を持った配列参照が得られることになる。ページオブジェクトからpagenum()メソッドでページ番号を得ることができるので、索引を作るのに利用できる。
文書オブジェクトのdestnamesメソッドですべてのDestの名前のリストを得ることができる。
@names = $docobj->destnames;
リンク先に名前を指定した場合にその対象のリンク先が存在しないと、エラーとなってスクリプトが停止する。文書オブジェクトのmissdestオプションに'neglect'を指定するとリンク先の名前が存在しないリンクは無視される。'carp'を指定すると警告が表示されるがスクリプトは停止しない。例えば次のようにする。
$docobj->setoption(missdest => 'neglect');
PDFは暗号化できる。PDFのバージョンによって使用できる暗号化方式の範囲が違うが、今のところPDFJではもっとも基本的な40ビットRC4暗号化をサポートしている。
暗号化するには、encrypt()メソッドを用いて、オーナーパスワード、ユーザーパスワード、ユーザーへの使用許可フラグ、を指定する。
$docobj->encrypt($ownerpass, $userpass, $allow);
オーナーパスワードとユーザーパスワードに同じものを指定すると、オーナー権限で開くことはできなくなる。
ユーザーへの使用許可フラグは、次の記号を並べた文字列として指定する。
P … 文書の印刷
M … 文書内容の変更
C … 文書からのテキストと画像のコピー
N … テキスト注釈および対話フォームフィールドの追加、変更
※テキスト注釈および対話フォーム機能は今のところPDFJでは未サポート
PDFにはユーザーが入力した内容を保存したりサーバーへ送信したりできる対話フォーム機能がある。PDFJで対話フォームを文書中に作成するには、まず次のようにしてPDFJ::Formモジュールを読み込んでおく。これによって以下で説明する機能が使えるようになる。
use PDFJ::Form;
そして文書ドキュメントのnew_fieldメソッドでフォームフィールドオブジェクトを作成する。new_fieldメソッドの引数はハッシュまたは一つのハッシュ参照で与える。
$fieldobj = $docobj->new_field(%spec);
$fieldobj = $docobj->new_field(\%spec);
引数のハッシュのキーはフォームフィールドのタイプによって異なるが、次のものはどのタイプでも共通(※は必須)。
type => フィールドタイプ※
name => フィールド名※
width => 幅(ポイント)※
height => 高さ(ポイント)※
noprint => 真だと印刷時に表示されない
readonly => 真だと入力できない
required => 真だと必須入力
noexport => 真だとデータとして書き出し/送信されない
フィールドタイプは、Text、Button、CheckBox、RadioButton、ComboBoxのいずれか。
new_fieldメソッドで得られたフィールドオブジェクトは、widthとheightで指定した大きさを持った表示可能オブジェクトである。
以下、フィールドタイプ毎に指定できる引数を説明する。※は必須。
一行または複数行の文字列を入力できるフィールド。
type => 'Text'※
font => フォントオブジェクト※
fontsize => フォントサイズ※
multiline => 真だと複数行
password => 真だと入力文字がマスクされる
maxlen => 最大入力可能文字数(省略すると無制限)
fileselect => 真だと入力内容をファイル名としてそのファイル内容を送信(PDF1.4以降)
donotspellcheck => 真だとスペルチェックしない(PDF1.4以降)
donotscroll => 真だとスクロールせず入力領域の範囲内で入力(PDF1.4以降)
comb => 一行にmaxlen文字を均等に配置(一行の場合のみ)(PDF1.5以降)
fileselectを真に指定した時はSubmitボタンのformatにPOSTを指定しなければならない(下記参照)。
クリックすることでデータ送信など各種の動作をするボタン。
type => 'Button'※
buttontype => ボタンタイプ※
font => フォントオブジェクト※
fontsize => フォントサイズ※
caption => キャプション文字列※
ボタンタイプは、Submit(データ送信)、Reset(入力をリセット)、Import(ファイルからデータ読み込み)、JavaScript(JavaScriptのスクリプトを実行)のいずれか。ボタンタイプによってさらに次の引数を指定する。
※Submitの場合
url => データの送信先サーバーのURL※
format => データフォーマット(FDF、POST、GETのいずれか、省略するとFDF)
fields => 対象フィールド名の配列参照(省略すると全フィールド)
exclude => 真だとfieldsで指定したフィールド以外を送信
includenovaluefields => 真だと空項目も含める
submitcoordinates => 真だとボタンのどの位置をクリックしたかを送信
※Resetの場合
fields => 対象フィールド名の配列参照(省略すると全フィールド)
exclude => 真だとfieldsで指定したフィールド以外をリセット
※Importの場合
file => 対象ファイル名※
※JavaScriptの場合
javascript => スクリプト文字列※
クリックするとチェックが入った状態と外れた状態でトグルする正方形のフィールド。
type => 'CheckBox'※
size => ボックスサイズ(ポイント)※
on => 真だとデフォルトでチェックが入る
sizeで指定した大きさのボックスがwidthとheightで指定した領域の中心に置かれる。
通常はチェックボックスフィールドの隣にその意味を示すテキストを表示するが、それはチェックボックスフィールドには含まれず、ユーザーに任されている。
クリックするとグループ化された一連のフィールドのどれか一つだけがチェックが入った状態になる円形のフィールド。
type => 'RadioButton'※
size => ボタンサイズ(ポイント)※
values => 各ラジオボタンの値となる文字列の配列参照※
sizeで指定した半径の円がwidthとheightで指定した領域の中心に置かれる。
ラジオボタンフィールドの場合、new_fieldメソッドは、各々がvaluesで指定した値を持つラジオボタンフィールドのリストを返す。
@radios = $docobj->new_field(type => 'RadioButton', values => [1,2,3],...);
通常はラジオボタンフィールドの隣にその意味を示すテキストを表示するが、それはラジオボタンフィールドには含まれず、ユーザーに任されている。
文字列のリストから選択できるフィールド。
type => 'ComboBox'※
values => 選択肢となる文字列の配列参照※
font => フォントオブジェクト※
fontsize => フォントサイズ※
list => 真だとリストボックス(デフォルトはコンボボックス)
edit => 真だと手入力も可能(コンボボックスの場合)
default => デフォルト選択肢の文字列(省略するとvaluesの先頭要素)
multiselect => 真だと複数選択可(PDF1.4以降)
donotspellcheck => 真だとスペルチェックしない(PDF1.4以降)
commitonselchange => 真だと選択肢をクリックした時点で変更とみなす(PDF1.5以降)
各フィールドオブジェクトは、背景が白で、周囲に灰色の濃淡で立体的に見えるような枠が表示されるが、次の引数でこれらを調整することができる。
framewidth => 枠の幅(ポイント、デフォルトは1)
lightcolor => 枠の明色部分の色(デフォルトは0.9)
mediumcolor => 枠の中間色部分の色(デフォルトは0.75)
darkcolor => 枠の暗色部分の色(デフォルトは0.6)
fillcolor => 背景色(デフォルトはボタンでは0.8、その他では1)
色は灰色の濃淡(0が黒、1が白)の他、'#ff00ff'のようにRGBでも指定可能。
PDFJ::Doc->new($version, $pagewidth, $pageheight)
PDFJ::Doc->new({version => $version, pagewidth => $pagewidth, pageheight => $pageheight})
add_info($key => $value, ...)
add_info({$key => $value, ...})
encrypt($ownerpass, $userpass, $allow)
encrypt({ownerpass => $ownerpass, userpass => $userpass, allow => $allow})
filter($filter)
filter({filter => $filter})
print($file)
print({file => $file})
new_page($pagewidth, $pageheight, $dur, $trans)
new_page({pagewidth => $pagewidth, pageheight => $pageheight, dur => $dur, trans => $trans})
insert_page($number, $pagewidth, $pageheight, $dur, $trans)
insert_page({number => $number, pagewidth => $pagewidth, pageheight => $pageheight, dur => $dur, trans => $trans})
get_page($pagenum)
get_page({number => $pagenum})
lastpagenum
outlinetree
destnames
destpage($name)
destpage({name => $name})
new_font($basefont, $encoding, $abasefont, $aencoding, $asize)
new_font({basefont => $basefont, encoding => $encoding, abasefont => $abasefont, aencoding => $aencoding, asize => $asize})
italic($font1, $font2, ...)
italic({base => $font1, decorated => $font2})
bold($font1, $font2, ...)
bold({base => $font1, decorated => $font2})
new_image($src, $pxwidth, $pxheight, $width, $height, $padding, $colorspace)
new_image({src => $src, pxwidth => $pxwidth, pxheight => $pxheight, width => $width, height => $height, padding => $padding, colorspace => $colorspace})
new_minipage($width, $height, $padding)
new_minipage({width => $width, height => $height, padding => $padding})
new_field(%args)
new_field(\%args)
※new_fieldメソッドはuse PDFJ::Form;すると使えるようになる。
PDFJ::Page->new($docobj, $pagewidth, $pageheight, $dur, $trans)
pagenum
layer($layernum)
layer({layer => $layernum})
setattr($name, $value)
setattr({name => $name, value => $value})
getattr($name)
getattr({name => $name})
PDFJ::AFont->new_std($docobj, $basefont, $encoding)
PDFJ::AFont->new_ttf($docobj, $ttffile, $encoding)
PDFJ::CIDFont->new_std($docobj, $basefont, $encoding, $afontobj, $asize)
PDFJ::CIDFont->new_ttf($docobj, $ttffile, $encoding, $afontobj, $asize)
次のメソッドは、PDFJ::Text、PDFJ::Paragraph、PDFJ::Block、PDFJ::Image、PDFJ::Shapeの各クラスで共通して使える。
show($page, $x, $y, $align, $transtype, @transargs)
show({page => $page, x => $x, y => $y, align => $align, transtype => $transtype, transargs => [@transargs]})
width
height
PDFJ::Text->new($text, $style)
PDFJ::Text->new(@texts, $style)
PDFJ::Text->new([@texts], $style)
PDFJ::Text->new({texts => $text, style => $style})
PDFJ::Text->new({texts => [@text], style => $style})
PDFJ::Paragraph->new($text, $style)
PDFJ::Paragraph->new({text => $text, style => $style})
linesnum
break($size)
break(@sizes)
break({sizes => $size})
break({sizes => [@sizes]})
PDFJ::Block->new($direction, $object, $style)
PDFJ::Block->new($direction, @objects, $style)
PDFJ::Block->new($direction, [@objects], $style)
PDFJ::Block->new({direction => $direction, objects => $object, style => $style})
PDFJ::Block->new({direction => $direction, objects => [@objects], style => $style})
adjustwidth($size)
adjustwidth({size => $size})
adjustheight($size)
adjustheight({size => $size})
break($size)
break(@sizes)
break({sizes => $size})
break({sizes => [@sizes]})
widths
heights
PDFJ::Image->new($docobj, $src, $pxwidth, $pxheight, $width, $height, $padding)
setsize($width, $height)
setpadding($padding)
PDFJ::Shape->new($style)
PDFJ::Shape->new({style => $style})
マクロ命令(描画範囲の管理がおこなわれる)
line($x, $y, $w, $h, $style)
line({x => $x, y => $y, w => $w, h => $h, style => $style})
box($x, $y, $w, $h, $spec, $style)
box({x => $x, y => $y, w => $w, h => $h, spec => $spec, style => $style})
circle($x, $y, $r, $spec, $arcarea, $style)
circle({x => $x, y => $y, r => $r, spec => $spec, arcarea => $arcarea, style => $style})
ellipse($x, $y, $xr, $yr, $spec, $arcarea, $style)
ellipse({x => $x, y => $y, xr => $xr, yr => $yr, spec => $spec, arcarea => $arcarea, style => $style})
polygon([@coords], $spec, $style)
polygon({coords => [@coords], spec => $spec, style => $style})
arc($x, $y, $r, $start, $end, $spec, $style)
arc({x => $x, y => $y, r => $r, start => $start, end => $end, spec => $spec, style => $style})
オブジェクト配置命令(描画範囲の管理がおこなわれる)
obj($obj, @showargs)
obj({obj => $obj, showargs => [@showargs]})
プリミティブ命令
setboundary($x, $y)
gstatepush
gstatepop
linewidth($w)
linedash($dash, $gap, $phase)
ctm(@array)
fillcolor($color)
strokecolor($color)
fillgray($g)
strokegray($g)
fillrgb($r, $g, $b)
strokergb($r, $g, $b)
moveto($x, $y)
lineto($x, $y)
curveto($x1, $y1, $x2, $y2, $x3, $y3)
rectangle($x, $y, $w, $h)
closepath
newpath
stroke
closestroke
fill
fill2
fillstroke
次のメソッドはPDFJ::TextStyle、PDFJ::ParagraphStyle、PDFJ::BlockStyle、PDFJ::ShapeStyleのすべてで使える。
clone(%args)
clone({%args})
clone($argstr)
PDFJ::TextStyle->new(%args)
PDFJ::TextStyle->new({%args})
PDFJ::TextStyle->new($argstr)
PDFJ::ParagraphStyle->new(%args)
PDFJ::ParagraphStyle->new({%args})
PDFJ::ParagraphStyle->new($argstr)
PDFJ::BlockStyle->new(%args)
PDFJ::BlockStyle->new({%args})
PDFJ::BlockStyle->new($argstr)
PDFJ::ShapeStyle->new(%args)
PDFJ::ShapeStyle->new({%args})
PDFJ::ShapeStyle->new($argstr)
PDFJ::Color->new($r, $g, $b)
PDFJ::Color->new($rgb)
PDFJ::Color->new($g)
PDFJ::Color->new({value => $rgb})
PDFJ::Color->new({value => $g})
PDFJ::Outline->new($title, $level)
PDFJ::Outline->new({title => $title, level => $level})
PDFJ::Dest->new($name)
PDFJ::Dest->new({name => $name})
以下は、通常はユーザーが直接扱う必要のない、PDFJ内部で使われるクラス。
PDFJ::Docの下請け。PDF文書=PDFJ::DocオブジェクトをPDFファイルに書き出す際に、PDFオブジェクトの索引情報などのメタデータを付加して、規定に従ったファイル構造を作る役割をする。
PDFJ::Docの下請け。PDFJ::Docオブジェクトに含まれるPDFオブジェクトを管理する。
PDFJ::Textの下請けとして、テキスト属性を保持する。
PDF文書はAdobe社が規定したPDFの文法に沿って構成されており、その構成単位もまた「オブジェクト」と呼ばれる。このPDFレベルのオブジェクトを、上記で説明したようなPDFJにおけるPerlオブジェクトと区別するために、「PDFオブジェクト」と呼ぶことにする。PDFJは、低レベルでプリミティブなPDFオブジェクトを隠蔽し、ユーザーが直接扱わなくてよいようにしている。もし自分でPDFオブジェクトを操作したいときは、PDFJ::Object::* クラス群を使えばよい。
TrueTypeフォントファイル(.ttf)の内容を読みとったり、サブセットを作成したりする。
TrueTypeCollectionフォントファイル(.ttc)を読みとって、指定した番号のフォントについてのPDFJ::TTFオブジェクトを得る。
OpenTypeフォントファイル(.otf)の内容を読みとったり、サブセットを作成したりする。
CFF(Compact Font Format)を扱う。
対話フォーム機能を提供する。
対話フォームの個々のフィールドを表す。
中島 靖 nakajima@netstock.co.jp http://hp1.jonex.ne.jp/~nakajima.yasushi/|"http://hp1.jonex.ne.jp/~nakajima.yasushi/"
「JIS X 4051(日本語文書の行組版方法)」(JIS、1995)
「PDFリファレンス 第2版」(アドビシステムズ、2001)
Hey! The above document had some coding errors, which are explained below:
Non-ASCII character seen before =encoding in '日本語PDF生成モジュール'. Assuming UTF-8
You forgot a '=back' before '=head2'