奴隷商人ライブネクスト
登場人物一覧
| 藤沢聖美 | ごく普通のコスプレ少女。愛らしい顔と少し肉付きの良い肢体を持つ。加藤真実という恋人がいる。 |
| 加藤真実 | 聖美の恋人。無駄のない体つきをした青年。 |
| 須藤 | 謎の男達のリーダー格。体格がよく、低い声で相手を威圧する。 |
| 日吉 | ゴリラ並の体格を持つ。見た目通り力が強く、身体も頑丈なボディーガード。 |
| 高江洲 | もと医師を目指していた男。女性の身体の構造を知り尽くし、内部から奴隷化する。 |
| 飯島 | 謎の男。高い知性を持つ参謀役。女言葉でしゃべる男。 |
| みなみ | 偶然から、真実と知り合った少女。肩の辺りに切りそろえた髪型、背の低い少女。 |
| シャワールームから上がると、真実は聖美をベッドに座らせた。 「……何……するの?」 「…聖美……。聖美を救うためには……これしかないんだ」 真実は、聖美に全てを告げる。彼女の身体は恐らく麻薬と疑似ホルモンによって支配されている。その支配を解くために、麻薬はともかく疑似ホルモンには対抗できるはずだ。 二回以上、疑似ホルモンを投与されると身体から分泌されるホルモンバランスも崩れ、それが常習化するというのだ。 対抗するため、聖美の現在のホルモンバランスを確かめ、高江洲の打った薬をうち消すようにしなくてはならない。心理的拘束についても、同じように対抗できるかも知れない……。 「真実、でも…あなたにそんな事、出来るの?」 「俺一人じゃ無理さ。だが……今は、仲間がいるんだ」 「仲間?」 「あぁ……詳しくは今度話す。だけど…仲間がいるんだ。聖美を助け出す手助けをしてくれる、心強い仲間がね」 心強すぎるぐらいだ、と真実は思う。まさかヘリまで持ち出すとは想像すらしなかった。 「詳しく話してよ……ねぇ、どんな人達なの」 「それが……」 真実が言いよどむ。 「実は、俺もよく知らないんだ」 「………はぁ……?」 「ただ、ヘリを持ち出したり……裏の世界にまで通じる情報収集能力があったり、……本当に、仲間として心強くはあるんだ」 「ね。もし、その人達が私を別な意味で、その人達の奴隷に作り替えようとか思ったりしたらどうするの?」 「……大丈夫!」 「……その根拠は?」 「ない。けど大丈夫だ。俺がついてる。俺が必ず聖美を守ってやる」 根拠のない自信でそう言い切られても…と思う聖美ではあったが、今や他に手の打ちようもない。 「で、どうすればいいの、私は」 「聖美はここに居てくれていい。俺は、聖美の……その、愛液を……摂取して、それをサンプルとして仲間のいるところにもっていく。心理的拘束を解くのは肉体の状態が良くなってからの方がいいって事だから」 「……いや」 「聖美、解ってくれ。そうしないと、もしかしたら聖美は元の身体にもどれない可能性だってあるんだ。今ならまだ間に合う。少し恥ずかしいのは我慢して……」 「いや。私、もう真実と離れるのはいや。お願い……ねぇ、お願いだから、私を置いていかないで。……もう、私を一人にしないで……」 聖美が懇願し、真実の腕にしがみつく。 「聖美、聞いてくれ。仲間は東京にいる。ライブネクストの連中にまた近づく事になる。危険なんだ。いつ、彼女たちが襲われるか解らないんだ」 「……女の人なの?」 「あぁ。聖美みたいにライブネクストにとらわれ、作り替えられようとした人達を助け出し、そのうちの一部の人達が闘ってる」 真実は思い出していた。初めてみなみに連絡し、ヘリを借りてくれたときのことを。 彼女は身の上を語った。かつて親友を喪い、その仇を討とうとしてライブネクストを追い回した彼女が、彼らに捕らえられた事。 悪夢のような二週間の後、今の彼女のような工作員が彼女を救い出してくれたこと。 その工作員も日吉に殺された事。そして、ようやく悪夢から立ち直ったみなみをずっと励ましてくれていた工作員は、ついこの間、真実救出の時に殺されたこと。 その工作員は、元女性だったのだが、ライブネクストの実験室で身体を弄り回され、女性としての機能を喪失させられたために男性として生きてきた事。 ……時折涙しながら全てを語ったみなみは、今までの力強い彼女の姿からは想像もつかなかった。 「……俺は正直聖美には闘って欲しくない。俺は…出来れば、聖美を安全な場所に逃がして、その上であいつらを皆殺しにしてやりたいんだ……」 「……ダメ。真実、人殺しはダメ。そしたら、あいつらと一緒になっちゃう……」 「あいつらはたしなみで人を殺すんだぞ! 何も知らない、穏やかに暮らしていた聖美をこんな身体にしたのはあいつらなんだぞ!!」 「……こんな……身体……」 聖美が自らの身体を抱き締め、ふるっ、と震える。 「あ、違う……それでも、聖美は綺麗なんだ……その、なんて言えばいいのかな!」 「……真実…」 「綺麗なんだ。ホントに……Hだろうがなんだろうが、聖美は聖美なんだ。本当に、聖美は綺麗な……可愛らしい、俺の知ってる聖美なんだよ」 「……ん……真実……」 秘壺の奥にまた疼く感じがする。聖美がもじもじしてその感覚に耐えているというのに、真実はさらに言葉を繋いでいるのだ! 「聖美、だから……俺は何も変わらずに聖美を好きで居続けられる。だけど、麻薬や薬で苦しんでるのも解ってる。だから…それをどうにかしたいんだ」 「……はぁ……ん……」 「聖美、聖美、可愛い、綺麗な俺のお姫様、俺が必ず助けて上げるから……だから、だから、だから聖美……」 「ダメッッ!!」 真実を抱き締めると、聖美は秘壺をグチュグチュとかき混ぜる。自らの指でクリトリスをしごき、秘壺に指を入れてかき混ぜる。 「真実、真実……真実ぉ……今は、こんな風にしか出来なくてゴメンね……でも、身体はかならず元に戻すから…あなたに抱いて貰えるからだになるから……」 聖美がさらにはぁぁっ、と熱い息を真実の首筋にもらす。 「だから、お願い……今は、こうさせて……愛液が欲しかったら幾らでも取って良いから……あふっ……はぁう………んぁ……はぁぁあっ!!」 「聖美……」 「びぅっ…触って、真実、胸を…あっ、強く、強く揉んで……私、あはあっ……感じちゃうから…もう……ひぁっ……んぁっ」 「こう?」 グニグニと胸を揉む。柔らかな胸の双丘の内側に芯が一本あり、そこをぐりぐりと至極と聖美がぎゅうっと真実を抱き締める。 片方の手が、自分自身の二枚貝とクリトリスを交互に弄り、その度にグチュッ、と音が耳を打つ。 「真実……ほら、一杯出てるよ…私のここ、グチュグチュになって……一杯出てる…」 「……解ってる…綺麗だよ、聖美…………」 聖美が絶頂するまで数分を要した。その後、真実はガラス管に愛液を取ると、それを鞄に入れる。 更に十数分後、彼らはホテルをチェックアウトした。 ダンッ!! 飯島の目の前のテーブルが大きく歪み、叩き付けられた拳の下で悲鳴を上げる。 「……失態、ね」 怒りを顕わにした飯島を見たのは初めてだった。日吉は、そんな姿の飯島を見て、同時に自分の姿を思い浮かべて思わず冷笑を浮かべてしまう。 彼らの緻密な構想はことごとく壊されてしまった。あの男……加藤真実の非常識な行動故に。 「……あれは加藤真実だけじゃないな。後ろに例のネズミ共が着いたと見える……」 「だとしても、この状況をもし須藤ちゃんが知ったらアタシ達、ただじゃ済まないわ」 「あまり考えたくないですね……」 高江洲が首をすくめる。須藤は幸いあと3日は帰ってこない。アメリカに売り飛ばす奴隷を集め、その交渉と引き渡しのためについ先ほど空港へ……タイへと向かったのだ。 「あいつらの居場所は?」 「…………」 「それも解らないで一体どんな対策を立てるんですかい?」 日吉が肩をすくめる。彼自身、5階からたたき落とされたにも関わらず、打撲と打ち身だけで終わらせている辺り尋常ではない。 その横の高江洲が熱心にアンチョコを見ながら薬剤を配合している。メモ用紙には、逃げた直後の聖美の状態を記してあり、それから経過時間を考えて効果的な薬剤を作り出す。 「……日吉。そういうあなたは何かアイデアでもあるの?」 「…そうだな……もし俺があいつらなら、とっとと東京から逃げて息を潜める。幾ら須藤さんの情報網でも、ひとたび…そう…神奈川か静岡辺りに逃げてしまえばそれで人一人を捜す事が難しくなるからな」 「……難しくなる方法は解ったわ。で、アタシ達が奴らを見つける方法は?」 「ない」 日吉が言い切り、嘆息した飯島がまたもテーブルをダン! と叩く。 「あのねぇ、ふざけてる場合じゃないのよ? このままじゃ、コンクリ抱いて東京湾に沈むのは真実じゃなくてアタシ達って事になりかねないのよ?」 「…ヒステリー起こさないで下さいよ、飯島さん」 「何?!」 高江洲の言葉に飯島が目を剥いて反論する。 「まぁまぁ。今は結構便利なモノがあるらしいんですよ。Nシステム、だっけかな。本来は盗難車を探すためのシステムらしいんだけど……」 「あぁ、道路に着いてるあのカメラみたいなのね。それがどうしたの?」 「須藤さんなら、アレを使うんじゃないかなぁと…」 飯島が諒解した表情を浮かべる。須藤のコネで警察のそういった部門に手が入っている筈だった。だが、そのコネを使うという事は即ち、須藤に今の自分たちの状況を知られてしまうと言うことだ。 「……いいじゃないですか。知られたって。須藤さんは経過より結果を重んじる人でしょう?」 「あなたは気楽ねぇ。でも、もし須藤ちゃんが怒って結果を待たずしてアタシ達を処罰したいと思ったりしたらどうする?」 「さぁ。今までそんな事、ありましたっけ?」 彼はそう言いながら最後のチューブの中身を混ぜ合わせる。どろり、とした液体ができあがる。 「ま、今回はぼくもかなり甘かった。だから、もう意思力ごときで克服できるような安っぽい薬は絶対作りませんよ」 「……頼むわ。もう、これが最後なんだからね」 飯島が背を向けると、電話機に取り付く。 数分後、部屋から全ての人影が消えた。 聖美は不安そうに手元の名刺を見下ろした。 みなみに連絡を取り、真実は聖美と共にみなみ達の隠れ家……新宿二丁目の一角だった……に立ち寄り、研究を担当する仲間に渡すためのサンプル…聖美の愛液…を渡した。 その後、安全の為にここに留まるようにとのみなみの言葉を拒んだ。聖美は自分の部屋の事も心配だったし、色々と複雑な想いもある。 聖美の不安の原因が、この名刺の持ち主であるみなみである事を、真実は気付いているだろうか? はきはきして、少々口やかましい位のあの小柄な童顔の少女は、それでも聖美より数ヶ月だけではあるが年上だった。そして、真実と聖美に対して親身も及ばぬほどに世話を焼いてくれた。 一つには、聖美のたどった運命を真実から聞かされていたからというのもあるだろうが、性根が優しい女性である事は容易に知れる。 「ねぇ……真実?」 「ん?」 走るレジェンドの助手席では、聖美が名刺を弄びつつ視線はその先の床に着いた自分の靴を見ている。 「……みなみさんって、可愛い人だね」 「まぁ、な」 いつもなら『何言ってるんだ!』とムキになって否定するか、『聖美ほどじゃないけどな』などと巧く言い回すのに、半ば上の空で答える。それが、先ほど真実が彼女の前で妙に意識した態度を取った事と相まって更なる不安を呼ぶ。 真実がみなみを意識していたのは、彼女から受けたキスがあまりにも暖かく、甘い吐息が聖美のそれとは違う香りがした事……一人の女性として、みなみを見てしまった事からくるものだが、むろん聖美はそんな事は知らない。 「……みなみさん、優しいよね」 「まぁ、な」 「真実っていい男だよね」 「まぁ、な」 「私……可愛くないもんね……」 「………」 さすがに言葉を止めて聖美を見る真実。 「ちょ、ちょっと前見て前ッ! あなた、気になったら相手を注視する癖、運転中だけは止めてって言ったのに〜」 「あ、あぁ……」 車が一瞬蛇行して、また元の進路に戻る。サイドミラーを見るとさっきまですぐ横に着けていた車が既に遠く距離を取っているのが見える。 「……はぁ……」 真実が嘆息すると、手を伸ばして聖美の頭をくしゃくしゃと撫でる。 「ちょ……もう、危ないよぉ……」 「大丈夫大丈夫。……聖美、変な事考えるなよ」 「変な事って?」 「……俺が好きなのは聖美だけだよ」 不意に、聖美の顎に宛われた手が聖美の顔を真実の方に向ける。真実は、暫く直線になる事を確かめた上で、一瞬にして聖美の唇を奪っていた。 「………んっ……んんっ!!」 「…………」 「……ま……真実、危ない……」 「大丈夫。直線だから」 蛇行しつつも道路からははみ出ない真実の車を前に見て、後ろの車の運転手はあの車だけは決して追い越すまいと決意していた。 |
続きを読む/戻る