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続・奴隷商人ライブネクスト

煉獄の戦乙女


登場人物一覧

藤沢聖美 ごく普通のコスプレ少女。愛らしい顔と少し肉付きの良い肢体を持つ。加藤真実という恋人がいる。
加藤真実 聖美の恋人。無駄のない体つきをした青年。
須藤 謎の男達のリーダー格。体格がよく、低い声で相手を威圧する。
日吉 ゴリラ並の体格を持つ。見た目通り力が強く、身体も頑丈なボディーガード。
高江洲 もと医師を目指していた男。女性の身体の構造を知り尽くし、内部から奴隷化する。
飯島 謎の男。高い知性を持つ参謀役。女言葉でしゃべる男。
みなみ 偶然から、真実と知り合った少女。肩の辺りに切りそろえた髪型、背の低い少女。
北郷良治 聖美のマンションの隣に住む住人。引きこもりのダメ人間だが、彼の行動が新たな火を呼び起こす……。

第五話 異端決起

 真実と聖美が帰路に就いた頃、北郷は信じられないものを目の当たりにしていた。
 それは、バイトを探すべくネットにアクセスした時から、始まっていた。
 
 『高収入バイト』とだけ記されたメールが、彼のメールボックスに投函されていたのだ。
 書かれた通りに操作し、フォームに必要事項を書き込み、返信する。
 ややあって、再び返信されてきた内容は驚くべきモノだった。
 
 報酬金額はゆうに200万を越える。彼にしてみれば天文学的な金額だ。
 怪しい、と普通の人間なら思うだろう。だが、北郷はその金額と、webサイトに記された成功例を読んですっかりその気になってしまった。
 女性のHな写真を提供すること。webサイトに載っていた写真は、どれも官能的で驚くばかりだった。
 さらに、縛られているもの、暴れて像がぶれているもの、動画の中で泣き叫んでいるものなどが幾つも置かれている。
 
 これらはすべて高江洲が用意したモノだ。成功談は真に迫っており、誰が見ても不自然ではないように書かれている。

「……マジかよ……」

 呟いて、北郷はページを次々とクリックしていく。
 この画像だけでもお宝モノであろうが、実際にはもっと多くの画像や動画があるという。

「……君も、身近な女性の写真で金持ちになろう……か。さらに、ライブネクストはあなたに最適な女性を斡旋出来ます……おいおい、なんだよこれ」

 興奮した北郷が、最後に置かれている「申し込み」ボタンの前で手を止める。
 確かにすごいだろう。だが、これをクリックしたとたん、何もかもが嘘で、とんでもない金額を請求されるのではないか……と疑っていた。
 だが、ダメで元々だ。彼はボタンをクリックした。
 
 すぐに、メールが届いた。そこには、「女性は出来れば同意がいいが、そういう女性が居ない場合は無理矢理でも良い」等と書かれている。
 更に「そういう場合、ライブネクストからのフォローを受ける権利がある。道具と費用をフォームに書いて送信すればフォローが受けられる」と。
 彼は半信半疑で、メールフォームに必要な金額を記入し、さらに道具の「スタンガン」「拘束具」などを申し込んで送信した。
 もちろん、何かが起きるわけではない。
 だが……もしも……もしも、あの大金が手に入るなら……と彼は思う。
 
 働く必要が無くなるではないか!
 
 彼はその夢を見るために横になって目を閉じた。
 一瞬、うとうとと意識が遠くなり、夢見心地になる。
 ……と、突然ドアを叩く者が居た。

「北郷さん、北郷さん!!」

 驚いて飛び起きると、ドアの覗き窓から外を見る。
 二人の男が、大きなトランクを持って部屋の前にいる……。

「はい」
「北郷さんですね? お届け物です」

 そういって、彼は大きなトランクを差し出した。

「すいません、これは……」
「契約したでしょ? LN……ライブネクストに」
「………あ……あのバイト……」
「はい、これ、契約書です。サインしてください」
「でも……」
「それと、この中にあなたの注文したものが入っています。中で確認したいのですが……」
「え?」

 北郷が一歩後じさる。それを了承とみたのか、男達二人がトランクを押して室内へと入り、鍵を閉める。

「……はい、これが契約書。そして道具の方は……」

 もう一人の男がトランクの鍵を開けて、中身を見せる。
 片面には、大きな紙袋があり、その中には札束が入っている。

「130万円ですね? お確かめを」
「え? ええ??」
「で、こちらがスタンガン。通常タイプと、警棒タイプの二つ用意しました。あと、これがバッテリ。それと手錠と拘束具一式ですね」
「………は……」
「あと、集音機とヘッドフォン……壁の向こうの音まで拾えますよ」

 北郷が、紙袋から札束を取り出し、枚数を数える。130枚……きっちりとある。
 
「………期限は1週間です。これを過ぎると道具とお金は全額返済です、いいですね?」
「は、はい」
「何か追加で必要なものがあれば、申し出て下さい」
「あの……」

 北郷が遠慮がちに声を出す。

「もし、警察に捕まったら……」
「…………」
「フォロー……してくれるんですよね?」

 男が少し残念そうに顔をうつむけて言う。

「……北郷さん、初回ですよね? うちは……二回目からしかそういう方面でのフォローは出来ないんです」
「……そう……なんですか」
「ですから、初回は安全に……外を歩いている女の子とか、危険ですからね」
「じゃ、どういうのを………」
「一人暮らしの女性とかいいですね。同じ建物の中だと、外を歩かずに済むからなおいい」

 男がそう言うと、北郷の部屋のドアを押し開ける。

「では、よろしく頼みますよ」

 扉が閉まる。
 革靴の足音が遠ざかるに連れ、北郷の表情が驚愕から歓喜へと代わっていく。
 あの札束は全部本物だった!!
 それに道具の数々………全部が、彼のために用意されたものだ。
 
 普通ならあり得ないこの状況も、資金的に追いつめられた北郷に取っては渡りに船。何より、現実に現金が用意されているではないか……。
 
 彼はすぐにパソコンに向き直った。
 やるなら……誰をやるか。
 それはもう、彼の中では決まっていた。
 問題は……いつやるかだ。
 1週間の期限の中で、そのチャンスが果たしてあるだろうか?
 彼は、今までになく興奮し、アダルトビデオのカセットを一つ取り出すと、デッキへと差し込んで再生した。

 それから3日かけて、彼は隣室の二人の行動を探った。
 聖美と真実はほぼまる一日同じ部屋におり、一人になる時間はほとんどないかと思えた。
 だが、午後2時……昼食を終え、二人が仲の良いところを北郷に当てつけて(いると彼は信じていた)から、真実は20分だけ外出する。
 それは、聖美を抱いた後で真実が必ず行う、周辺の偵察であった。
 わずか20分。しかも、この時間は時々妙に短かったり、或いは長かったりする。それがグリーンジュエルの沢渡みなみとの連絡の為であるとか、そういう事までは彼には判らない。
 ただ、この20分さえ制すれば……かならず可能性はある。
 そして……報酬の200万を貰う。用立てて貰った費用130万を返しても、70万残る。それに……この130万、単に冗談だろうと思って書いただけのものだ。
 不動産屋に家賃を払い込み、たっぷりと食料を買い入れ、室内を掃除し、機材を設置した。
 さらに、大量の防音材と、室内を外から遮断する遮光板を購入し、壁と窓のすべてに張り付ける。
 もし聖美が暴れたり叫んだりしても、ドアを開けない限りは音は一切外には漏れない。彼はそれを、アダルトビデオとコンポの組み合わせで試した。
 ドアが開かない限り、音は全く外に漏れていなかった。
 
 隣室の男の邪悪な陰謀など全く知らず、聖美と真実は昼食を採り終えて、いつもの様に真実が聖美を抱き寄せる。
 ふと、クリーニングから帰ってきたばかりの、聖美の学生時代の制服に目がいく。

「……な、聖美……久しぶりに……あれ、着てみようよ」
「………え?」

 驚いた顔で聖美が真実を見る。だが、すぐに何を意味するかを知って聖美はため息を大きく吐いた。

「……ほんとに……これ好きなのね」
「ああ、聖美なら何着ても似合うけど、これは特別だよ」
「…………もう」

 言いながらも、真実の腕からそっと抜け出して制服を手に取る。
 苦笑いしながら、聖美は着ているシャツとジーンズを脱いで、着替え始めた。
 
「……見ちゃダメ」
「どうして?」
「恥ずかしいモン」
「……恥ずかしがる顔も可愛いね」
「馬鹿! あっち向いてっ!」

 衣擦れの音が聞こえる。
 短くなったスカートも、きつくなった胸回りも、何度か制服を着ているうちに慣れてしまったのだろうか……?
 
「……いいよ」

 真実が振り返ると、制服姿の聖美を抱き寄せる。
 うつむき加減な聖美が、真実の胸板に手を置いて少し突き放そうとする。
 それに倍する力で聖美を抱き寄せると、すぐに二人は営みに入った。
 
 その行為の最中、北郷はずっと耳をすましていた。
 いつも、この行為を『聞き』ながら、彼は自慰行為にふけっていた。だが、今回はそうしていなかった。ただ、ヘッドフォンから流れてくる音を頼りに、二人が何をして何処に居るのかを頭の中で描いていた。
 間取りは同じはずだから、今二人が交わっているのは部屋の中央だ。
 
 やがて、行為が終わると、真実が着替える音が聞こえる。聖美の方は、いつになく激しかったのかまるで動く気配がない。

『……聖美?』
『……………』
『寝てる?』
『………うん……』

 ピピピピピ!!
 
 携帯電話の音が鳴り響き、北郷は一瞬飛び上がった。
 隣の部屋の真実の携帯電だった。

 真実の携帯電話が鳴ると、聖美は一瞬目を伏せる。
 今、彼の携帯に電話をしてくる人間は、彼女を除けば一人だけ……。

「あ、みなみさん?」

 ……やっぱり、と彼女はため息を吐く。
 少し室内の温度が下がった気がして、彼女は制服の前のボタンを留める。
 布団に潜り込むと、素足が布団に触れて心地よい。

「あ、ごめん、ちょっと……その……」

 真実の声が続く。どうやら、また何か頼まれ事でもしているのだろうか?
 或いは……この間の……『パーティ』……?

「ごめん、こっちからかける。それじゃ!」

 電話を切ると、真実が布団のそばに歩いてくる。

「……聖美?」
「……なぁに?」
「どうしたんだ? 元気ないぞ」
「……みなみさんってさ………」

 聖美が布団の中からぼそっと呟く。

「……可愛いよね」
「そうでもないぞ。人に無理難題押しつけるし、うるさいし……今だって都合の悪い時を狙って電話してくるし」
「でも、いつも来てるヘリコプター……今は飛んでないよ?」
「……ああ、ほんとだ。気を利かせてくれたのかな」
「いい人だよね………」
「あ、ああ……どうしたんだ?」
「別に」

 聖美が再び布団の中で丸くなって方向を変える。
 真実が困っている気配がする……だが、彼女は今顔を出す気にはなれなかった。

「聖美………」
「電話、行ってあげなよ。それに、定期連絡も来るんでしょ?」
「……あ、ああ」
「ごめん……私……ちょっと寝てる」
「わかった……」

 真実が部屋をでて、廊下を歩き去っていく。
 その音を聞きながら、彼女はゆっくりと身体を反転させ、布団から顔を出す。
 部屋にはもう誰もいない。
 そう思うと奇妙に心細くなり、彼女はまた布団に潜り込んだ。
 
 彼女は、いつも真実を見送る。帰ってくるときは自らドアの鍵を開ける。
 だが、彼女は今日は真実を見送らず、そして部屋の鍵は開いたままだった。
 
 ………そして……。
 
 部屋の扉がそっと開けられる。
 警棒のスタンガンを手に、『彼』はそっと……音を立てないように、そっと部屋の中へと歩いていく。
 一番大きな間取りの部屋に、布団が敷かれている。その盛り上がりから、そこに聖美が居ることがはっきりと判る。

「…………」

 ゆっくりと……ことさらゆっくりと布団にちかより、規則的な寝息を確かめると、北郷は布団の中へと警棒を差し入れた。
 警棒の先端が何かに触れた瞬間、彼はスイッチを入れる。
 
 バチバチバチッ!!!

「…………っっっ!!!!」

 何かが激しく跳ねた。北郷は布団を掴み、大きくめくりあげる。
 布団の中で、丸くなった聖美が目を見開いて北郷を見上げている。だが、ゆっくりとだが、聖美は逃れようと身体を伸ばしていく。
 不十分と見て取った北郷は、無防備にさらされた聖美の首筋に警棒をあてがうと、再びスイッチを入れた。
 
 バチバチバチバチバチバチッ!!!
 
「………………っっっ!!!」

 聖美の身体が跳ねて、がっくりと動かなくなった。
 瞼を持ち上げると、完全に気絶している風に見える。
 ふるえる手で、彼は警棒を腰に差すと、聖美のぐったりした身体を抱き上げる。
 制服の薄い生地越しに、聖美の肌の暖かさを感じて北郷は逸物が隆起しはじめるのを感じる。
 
 まだだ、と彼は自分に言い聞かせた。
 ……これからが本番なのだ……。

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